訪問看護2026年改定の経過措置とは、令和8年(2026年)6月1日の施行時点で完全に要件を満たせない事業所に一定期間の猶予を与える仕組みです。医療情報連携加算のウェブサイト要件、包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件、BCP、オンライン請求の扱いなどについて、厚生労働省の公式資料に基づき訪問看護2026年改定の経過措置を全項目整理しました。
この記事のポイント
- 経過措置の最短期限は令和8年9月30日(医療情報連携加算のウェブサイト要件)
- 最長期限は令和9年5月31日(包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件)
- 令和9年6月1日からBU評価料(Ⅰ)・物価対応料が倍額化
- BCPは経過措置の新設なし(令和6年改定で策定義務化済み・継続必須)
- 訪問看護医療DX情報活用加算で「オンライン請求」が実質要件化
1. 経過措置の全体像
訪問看護2026年改定の経過措置は、6カテゴリに整理できます。最短は令和8年9月30日(医療情報連携加算のウェブサイト掲載基準)、最長は令和9年5月31日(包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件)で、いずれも厚生労働省の告示第74号と「質の高い訪問看護の推進」資料が一次出典です。
| 期限 | 対象項目 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|---|
| 令和8年5月31日 | 旧算定方法告示(令和6年) | 廃止 | 6月1日から新単価適用 |
| 令和8年9月30日 | 医療情報連携加算 | ウェブサイト掲載基準の猶予 | 10月以降は実際のウェブ公開必須 |
| 令和9年5月31日 | 包括型訪問看護療養費 | 地域連携研修・事例検討会実績要件の猶予 | 6月以降は実績必須 |
| 令和9年6月1日 | BU評価料(Ⅰ) | 基本額2倍化(1,050→2,100円) | 自動反映 |
| 令和9年6月1日 | 物価対応料 | 単価2倍化 | 自動反映 |
| 令和9年6月1日 | BU評価料(Ⅱ) | 区分拡大(1〜18→1〜36) | 届出見直し必要 |
出典: 質の高い訪問看護の推進・告示第74号
経過措置が設定されなかった項目
逆に、経過措置の対象外で令和8年6月1日から即時適用となる項目もあります。具体的には、同一建物居住者への訪問看護(Ⅱ)の単価引き下げ(10人以上区分の新設、同一敷地内別棟を含む定義拡大)、訪問看護管理療養費の統合・細分化(1と2の統合、施設基準届出不要化)、機能強化型訪問看護管理療養費4の新設要件、訪問看護医療DX情報活用加算の電子資格確認・オンライン請求要件、保険医療機関と訪問看護STとの経済上利益提供の誘引禁止などが該当します。これらは令和8年6月1日時点で要件を満たさないと算定不可、もしくは違反扱いとなるため、5月中の対応完了が必須です。
2. 医療情報連携加算のウェブサイト要件(R8.9.30まで)
訪問看護医療情報連携加算(月1,000円)は、訪問看護2026年改定で新設した加算です。算定要件のひとつとして「連携機関リスト等のウェブサイト掲示」を求めますが、この要件には令和8年9月30日まで経過措置を設定しています。
経過措置の具体的な内容
質の高い訪問看護の推進P.9には、次のとおり明記しています。
経過措置期間中(令和8年9月30日まで)はウェブサイト掲載の基準に該当するものとみなす
施行日の令和8年6月1日時点でウェブサイト公開が間に合っていなくても、9月30日までは加算を算定できます。ただし10月1日以降は実際のウェブ公開がないと算定不可になるため、遅くとも9月中に公開準備を整えてください。
ウェブサイトに掲載すべき内容
ウェブサイトに記載する項目は、連携機関リスト(医療機関名と医療機関コード等)、連携ICTの種別(使用しているプラットフォーム名)、対応可能な情報連携の内容、事業所の連絡先と担当者の4点が中心です。利用者・連携先の双方が「この訪問看護STはどの医療機関と、どのICTで、どんな情報をやり取りしているか」を一読で把握できる構成を意識してください。
ウェブサイトを用意できない場合
独自ドメインのサイトを持たない訪問看護ステーションは、法人サイトの1ページとして掲載する、地域の訪問看護連絡会・訪問看護協会のサイトに連携情報を載せてもらう、厚労省「医療情報ネット(ナビイ)」へ登録して連携情報を記載するなど、代替手段を検討します。最低でも検索エンジンと連携先がアクセスできるURLで公開していれば要件を満たせます。
他の要件との関係
医療情報連携加算には、ウェブ掲載以外にも算定要件があります。経過措置の対象は「ウェブサイト掲載要件」だけで、それ以外は6月1日から即時適用です。具体的には、連携機関5以上、ICTでの診療情報共有(電話・FAXのみは不可)、過去90日以内の取得情報を1つ以上活用、訪問看護計画書・記録への反映の4点を満たす必要があります。詳しくは訪問看護医療情報連携加算【2026年新設】算定要件・届出・記録の書き方で扱っています。
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3. 包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件(R9.5.31まで)
包括型訪問看護療養費(04区分・1日5,960〜15,510円)は、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーション限定の新区分です。算定要件のひとつとして「地域医療機関・訪問看護ステーションとの合同研修・事例検討会等の連携実績」を求めますが、この要件には令和9年5月31日まで経過措置を設定しています。
経過措置の具体的な内容
質の高い訪問看護の推進P.16で、以下のとおり明記しています。
地域医療機関・訪問看護ステーションとの合同研修・事例検討会等の連携実績要件は、令和9年5月31日まで経過措置
施行日時点で連携研修の実績がゼロでも、令和9年5月31日までは包括型訪問看護療養費を算定できます。ただし令和9年6月1日以降は実績が必須になるため、施行後の1年間で計画的に実績を積んでください。
連携実績として認められる取組
連携実績の対象範囲は広く、地域医療機関との合同研修会の開催・参加、訪問看護ステーション同士の合同事例検討会、地域ケア会議への参加、地域包括支援センターとの合同カンファレンス、在宅医療連携拠点事業との協働などを認めます。月1回ペースで何らかの連携活動を実施できれば、1年間で12回程度の実績を積めます。
実績記録の書き方
経過措置終了後の届出に備えて、実施日、主催・共催団体、参加者(自事業所・他機関)、研修内容や事例概要、自事業所のケアへの反映内容を記録に残してください。とくに「自事業所のケアへの反映内容」を文章で残しておくと、地域連携の質を対外的に説明する材料になります。
他の包括型要件との関係
包括型訪問看護療養費の要件のうち、経過措置の対象は地域連携研修要件だけです。残る要件は、24時間体制(日中・夜間帯各1回以上訪問、実施時間60分以上は1日3回以上)、1日1回以上の看護職員(准看護師を除く)対応、90分以上区分での夜間帯対応看護職員常時1名以上、電子的方法での記録保存、高齢者住まい等への併設・隣接という5点です。これらは令和8年6月1日から即時適用となるため、施行前に体制を完成させておく必要があります。
4. R9.6.1倍額化(BU評価料・物価対応料)
令和9年6月1日には、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)と訪問看護物価対応料を倍額化します。これは経過措置ではなく、告示第74号で定めた段階的引き上げの第2段階です。
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)
| 時期 | 基本額 | 継続的賃上げ実施ST |
|---|---|---|
| 令和8年6月〜 | 1,050円 | 1,830円 |
| 令和9年6月〜 | 2,100円 | 2,880円 |
出典: 告示第74号07区分注4
基本額は所定額の100分の200となり、2倍に引き上げます。継続的賃上げ実施事業所はさらに2,880円まで引き上げ、賃上げを継続するインセンティブを強化します。
訪問看護物価対応料
| 区分 | R8.6〜 | R9.6〜(2倍) |
|---|---|---|
| 物価対応料1イ(月の初日訪問) | 60円 | 120円 |
| 物価対応料1ロ(月の2日目以降) | 20円 | 40円 |
| 物価対応料2(包括型算定者用) | 20円 | 40円 |
出典: 告示第74号08区分注3
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の区分拡大
BU評価料(Ⅱ)は、令和8年6月時点で区分1〜18まで設定し、令和9年6月からは区分1〜36まで拡大します(出典:告示第74号07区分注6)。賃上げ段階を細分化し、上位区分での算定が可能になります。たとえば区分18は令和8年6月時点で540円(継続賃上げ1,040円)、令和9年6月時点で630円(継続賃上げ1,040円)です。
倍額化への対応準備
倍額化は令和9年6月1日から自動適用しますが、レセコン・訪問看護システムの単価更新を令和9年5月中に完了し、BU評価料(Ⅱ)の区分19〜36に該当する場合は届出を見直してください。継続的賃上げ実施STの要件達成状況(R6→R9累計賃上げ率は一般職8.7%、看護補助者・事務職員13.7%)を確認し、賃金台帳と就業規則を賃上げ実施の証跡として更新します。
賃上げ率目標(R6→R9累計)
令和7年12月24日の大臣折衝事項で、R8年度+3.2%・R9年度+3.2%(一般職)、看護補助者・事務職員はR8+5.7%・R9+5.7%との賃上げ率目標を示しています(出典:訪問看護ステーション向け資料P.4)。R6→R8累計で一般職5.5%・看護補助者・事務職員8%、R6→R9累計で一般職8.7%・看護補助者・事務職員13.7%という水準が目安です。
5. BCP・身体拘束・オンライン請求の扱い
訪問看護2026年改定で話題に上がる「BCP(業務継続計画)」「身体拘束」「オンライン請求」について、経過措置の有無を整理します。
BCP(業務継続計画)
訪問看護ステーションのBCP策定は、令和6年改定時点で既に義務化しており、訪問看護2026年改定では特段の経過措置を新設していません。訪問看護管理療養費の「安全な提供体制」要件のひとつとして引き続き必須です(出典:実施上の留意事項通知P.16 第5の1(2)エ)。すでにBCPを策定済みの事業所は、自然災害時の連絡相談担当者の配置計画、感染症BCPと医療安全研修の連動、近隣訪看STとの相互支援ネットワーク整備(24時間体制連携にも関わる)の3観点で、改定を機に見直してください。
身体拘束
訪問看護2026年改定では、入院医療側で「身体的拘束の最小化を組織的に行う際の評価」を新設しましたが、訪問看護単独の身体拘束加算・経過措置規定は今回の改定資料に明示しません。訪問看護領域では、現行どおり基準省令に基づいた対応が継続します(出典:告示第75号)。日本看護協会の通知や公式ガイドも適宜確認すると安全です。
オンライン請求
訪問看護医療DX情報活用加算(50円)の算定要件として、「訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令第1条に規定する電子情報処理組織の使用による訪問看護療養費の請求」を明記しています(出典:留意事項通知P.24)。実質的にオンライン請求が加算要件と一体化したと読み取れます。
ただし、訪問看護のオンライン請求の全事業所への完全義務化期限は今回の改定資料に明記がなく、今後の事務連絡で段階的に示す可能性があります(医科側は過去通知でR6.4以降の原則義務化を進めています)。詳細な動向は厚生労働省 令和8年度診療報酬改定ポータルで随時確認してください。
オンライン請求体制の整備
オンライン請求がまだ未整備の事業所では、最初に国保連・社保連へオンライン請求の接続申請を行い、医療機関等電子証明書を取得します。次に訪問看護レセコンをオンライン請求対応版へ更新し、2〜3か月の試行期間を経て本稼働へ移します。電子証明書の発行に時間がかかる場合があるため、令和8年初頭から逆算して準備するのが安全です。
6. 要件移行チェックリスト(月次)
経過措置を逃さず確実に対応するため、月別のチェックリストにまとめます。月次の運用ルーティンに組み込み、施行後も継続して進捗を確認してください。
令和8年5月(施行直前)
- 医療情報連携加算:ウェブサイト準備は9月末まででOK(他要件は6月1日から適用)
- 包括型訪問看護療養費:地域連携研修実績は令和9年5月31日までの経過措置を確認(他要件は即時適用)
- 施設基準届出の提出完了(機能強化型4・包括型等)
- レセコンのシステム更新(新単価・新区分)
- 訪問看護計画書・報告書・指示書の新様式に差し替え(従前様式も使用可)
- BCPの策定・見直し(自然災害・感染症対応を強化)
- オンライン請求体制の整備(医療DX情報活用加算の前提)
令和8年6月〜9月
- 医療情報連携加算の他要件(5機関以上・ICT共有・記録)の運用確認
- 9月30日までにウェブサイト公開準備(連携機関リスト・ICT種別)
- 包括型算定事業所:地域連携研修の実施記録を開始
- 疑義解釈その3以降の最新情報をチェック
令和8年10月〜令和9年5月
- 医療情報連携加算ウェブサイト運用開始(10月1日〜)
- 包括型算定事業所:地域連携研修・事例検討会の実績積み上げ
- R9.6倍額化に向けたBU評価料(Ⅱ)の区分見直し準備
- 賃金台帳の整備(R6→R9累計賃上げ率の証跡)
令和9年6月(第2波改定)
- BU評価料(Ⅰ)の新単価(2,100円)適用確認
- BU評価料(Ⅱ)の区分19〜36への移行届出
- 物価対応料の倍額化(120円・40円)適用確認
- 包括型訪問看護療養費の地域連携研修実績を届出書類に記載
まとめ
訪問看護2026年改定の経過措置は、最短で令和8年9月30日(医療情報連携加算のウェブサイト要件)、最長で令和9年5月31日(包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件)です。令和9年6月1日からはBU評価料・物価対応料の倍額化も始まり、施行後も継続的な要件確認が欠かせません。
特に注意すべき4点をまとめます。第一に、経過措置を設定しなかった項目は6月1日から即時適用です(同一建物引き下げ、新設加算の大半、医療DX情報活用加算など)。第二に、ウェブサイト公開は9月末が最終期限で、10月以降は加算算定が止まります。第三に、地域連携研修は令和9年5月末までに実績必須となるため、1年間で計画的に積み上げてください。第四に、令和9年6月の倍額化は自動反映ですが、BU評価料(Ⅱ)の区分拡大など届出見直しが必要なケースもあります。
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よくある質問
Q1. 訪問看護2026年改定の経過措置は何種類ありますか?
A. 主な経過措置は2種類です。医療情報連携加算のウェブサイト掲載要件は令和8年9月30日まで、包括型訪問看護療養費の地域連携研修要件は令和9年5月31日まで猶予期間を設定しています。これに加えて令和9年6月1日からBU評価料(Ⅰ)・物価対応料の倍額化、BU評価料(Ⅱ)の区分拡大が段階的に始まります。
Q2. 医療情報連携加算は令和8年6月1日時点でウェブサイトがなくても算定できますか?
A. 算定できます。令和8年9月30日までの経過措置期間中は、ウェブサイト掲載の基準に該当するものとみなします。ただし他の要件(連携機関5以上、ICTでの診療情報共有、過去90日以内の情報活用、記録への反映)は6月1日から即時適用となるため、ウェブサイト以外の整備は施行日までに完了してください。
Q3. 包括型訪問看護療養費の地域連携研修は、いつから実績が必要ですか?
A. 令和9年6月1日以降は実績が必須となります。令和8年6月1日から令和9年5月31日までの1年間が経過措置期間です。月1回ペースで合同研修・事例検討会・地域ケア会議などを実施すれば、年12回程度の実績を積めます。実施日・主催団体・参加者・内容・ケアへの反映を記録に残してください。
Q4. BCPに関する経過措置はありますか?
A. 訪問看護2026年改定では、BCPに関する経過措置を新設していません。BCP策定は令和6年改定で既に義務化済みであり、訪問看護管理療養費の「安全な提供体制」要件として引き続き必須です。改定を機に、自然災害対応、感染症BCP、近隣訪看STとの相互支援ネットワークの3観点を見直してください。
Q5. 訪問看護のオンライン請求はいつまでに対応すれば良いですか?
A. 訪問看護全事業所への完全義務化の明確な期限は、今回の改定資料に示していません。ただし訪問看護医療DX情報活用加算(50円)の算定要件にオンライン請求が含まれるため、加算を取る場合は令和8年6月1日までに体制を整える必要があります。電子証明書の取得とレセコン更新に2〜3か月かかるため、早めに準備してください。
Q6. 令和9年6月1日のBU評価料倍額化に向けて、5月までに何を準備すれば良いですか?
A. レセコン・訪問看護システムの単価更新、BU評価料(Ⅱ)の区分19〜36に該当する場合の届出見直し、継続的賃上げ実施STの要件達成確認(R6→R9累計賃上げ率8.7%以上)、賃金台帳・就業規則の更新の4点を令和9年5月中に完了させてください。日本看護協会の最新通知もあわせて確認すると安全です。
参考・出典
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