訪問看護ステーション開業では、都道府県・地方厚生局・税務署・労働基準監督署・年金事務所など、多くの窓口で書類を提出する必要があります。届出書類は20種以上あり、記入ミスや添付漏れが発生すると、受理に数週間単位の遅延が生じます。
このガイドは、訪問看護開業時に必要な全書類を、提出先ごとに整理したものです。各書類の記入例・必要添付書類・提出期限・窓口の連絡先を網羅していますので、開業準備のチェックリストとしてご活用ください。
開業全体の流れについては訪問看護ステーション開業の手順ガイドで解説しています。あわせて参照してください。
この記事のポイント
- 訪問看護開業では最低20種類以上の書類を複数窓口に提出する必要があります
- 指定申請が最も重要で、前々月15日までの提出が必須です
- 法人設立・税務・社会保険・労働保険など並行進行が効率的です
- 提出期限の遅延を防ぐため、事前協議を最優先で実施することが重要です
- 本記事のチェックリストを活用することで、漏れなく開業準備を進められます
【早見表】開業時の届出書類サマリー
訪問看護開業準備で提出が必要な主な書類を、提出先ごとにまとめています。
| 提出先 | 主な書類 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 都道府県(介護保険) | 指定申請書類一式 | 指定希望月の前々月15日まで |
| 地方厚生局(医療保険) | みなし指定活用(介護保険の指定で自動適用) | 原則不要 |
| 法務局 | 法人設立登記 | 法人設立時 |
| 税務署 | 法人設立届出・青色申告承認申請等 | 設立後1〜3か月以内 |
| 都道府県/市町村税事務所 | 法人設立届出書 | 設立後15日以内 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金新規適用届 | 設立後5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届・就業規則届等 | 雇用発生後10日〜30日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 雇用発生後10日以内 |
1. 都道府県への指定申請書類(介護保険)
訪問看護ステーション開業で最も重要な手続きが、都道府県(または政令指定都市・中核市)への指定申請です。介護保険法に基づく指定を受けることで初めて、訪問看護事業者としてサービス提供が可能になります。詳細は厚生労働省のガイドラインを参照してください。
1-1. 指定申請の必要書類一覧
訪問看護開業で指定申請に必要な書類は以下の通りです。
| # | 書類名 | 記入のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 指定居宅サービス事業者指定申請書 | 所定様式。事業所名・所在地・開設者(法人)を記載 |
| 2 | 指定に係る記載事項(別紙) | サービス提供地域・営業日・営業時間・料金を記載 |
| 3 | 申請者(法人)の登記事項証明書 | 発行3か月以内の原本 |
| 4 | 定款または寄附行為の写し | 事業目的に訪問看護事業が含まれていること |
| 5 | 事業所の平面図 | 事務室・相談室・手洗い設備の配置を明記 |
| 6 | 事業所の写真 | 外観・入口・事務室・相談室・手洗い設備 |
| 7 | 事業所の賃貸借契約書の写し | 事業用契約であること |
| 8 | 管理者の経歴書 | 所定様式。看護師としての職歴・資格を記載 |
| 9 | 管理者の資格証の写し | 保健師または看護師免許の原本を確認後の写し |
| 10 | 従業者の勤務体制および勤務形態一覧表 | 常勤換算2.5人以上の人員配置を証明 |
| 11 | 従業者の資格証の写し | 全看護職員の免許(保健師・看護師・准看護師) |
| 12 | 運営規程 | サービス内容・料金・利用者の権利義務等を記載 |
| 13 | 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要 | 苦情受付窓口・対応手順 |
| 14 | 損害賠償責任保険加入証明書 | 事業者向け保険(賠償責任・個人情報漏えい含む) |
| 15 | 協力医療機関との連携体制を示す書類 | 協定書または覚書の写し |
| 16 | 役員名簿 | 所定様式。欠格事由に該当しないことの確認 |
| 17 | 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 | 算定する加算の届出 |
1-2. 事前協議の実施
多くの都道府県では、指定申請書類の正式提出の前に事前協議(または事前相談)の場を設けています。事前協議では、書類の記入内容・添付書類の過不足を事前にチェックしてもらえるため、後々の差し戻しを防ぐことができます。
訪問看護開業の指定申請では、事前協議を指定希望月の3か月前までに実施することが一般的です。自治体によって予約が必要な場合があるため、開業予定が決まった段階で早めに連絡することをお勧めします。
1-3. 提出期限
指定を受けたい月の前々月15日までに書類一式を提出することが原則です。例として、10月1日指定を希望する場合は、8月15日までに提出します。この期限に遅れると指定が翌月以降にずれるため、スケジュール管理が重要です。
1-4. 申請先
| 申請先 | 対応自治体 |
|---|---|
| 都道府県の介護保険担当課 | 一般の市町村 |
| 政令指定都市の介護保険担当課 | 札幌・仙台・横浜・名古屋・大阪等の20都市 |
| 中核市の介護保険担当課 | 人口20万人以上の中核市 |
開業地の自治体によって提出先が異なるため、事前に確認してください。
2. 医療保険の訪問看護:みなし指定の仕組み
訪問看護は介護保険と医療保険の両方で提供されます。医療保険の訪問看護事業者となるためには、原則として地方厚生局への指定申請が必要ですが、介護保険の指定を受けた訪問看護ステーションは、自動的に医療保険の訪問看護事業者としてみなされる仕組みがあります。
2-1. みなし指定の概要
介護保険法第71条・72条に基づき、介護保険の指定訪問看護事業者は、健康保険法における指定訪問看護事業者としてみなします。そのため、別途地方厚生局への申請は原則不要です。
2-2. みなし指定で算定できる加算の届出
ただし、医療保険の訪問看護療養費の加算(24時間対応体制加算・特別管理加算等)を算定する場合には、地方厚生局への施設基準届出が必要です。主な届出加算は以下の通りです。
訪問看護開業で算定を予定する主な加算として、24時間対応体制加算・特別管理加算Ⅰ・Ⅱ、機能強化型訪問看護管理療養費、訪問看護医療情報連携加算(2026年新設)があります。これら全ての加算を算定するには、地方厚生局または厚生(支)局への届出が必須となります。
| 加算名 | 届出要否 |
|---|---|
| 24時間対応体制加算 | 必要 |
| 特別管理加算Ⅰ・Ⅱ | 必要 |
| 緊急訪問看護加算 | 原則不要(都度算定) |
| 機能強化型訪問看護管理療養費 | 必要 |
| 訪問看護医療情報連携加算(2026年新設) | 必要 |
2-3. 届出様式
加算の届出様式は地方厚生局のウェブサイトで公開されています。事業所の名称・所在地・算定する加算・施設基準の適合状況を記載し、必要な添付書類(職員名簿・勤務表等)とあわせて提出します。
3. 法人設立に関する書類(法務局・税務署)
訪問看護ステーション開業では、法人設立に伴う書類も同時に進める必要があります。
3-1. 法務局への提出書類
訪問看護開業主体の法人設立に必要な書類は、法務局への登記申請の際に提出します。株式会社設立登記の場合、登記申請書・定款・発起人の決定書・取締役会議事録・就任承諾書・印鑑証明書・資本金払込証明書が必要です。合同会社の場合も同様に定款(=合同会社契約書)と各種添付書類を用意します。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 登記申請書 | 株式会社設立登記・合同会社設立登記等 |
| 定款 | 事業目的に訪問看護事業を明記 |
| 発起人の決定書または取締役会議事録 | 本店所在地・設立時役員の選任 |
| 就任承諾書 | 代表取締役・取締役の就任承諾 |
| 印鑑証明書 | 発起人・代表取締役の個人実印 |
| 資本金払込証明書 | 資本金の払込みを証明 |
3-2. 税務署への届出
法人設立後、税務署へ複数の届出を提出します。法人設立届出書は設立後2か月以内に提出し、青色申告の承認申請書は設立後3か月以内または事業年度末のいずれか早い日に提出します。給与を支払う場合は、給与支払事務所等の開設届出書を開設後1か月以内に提出することが必須です。従業員10人未満の場合、源泉所得税の納期の特例の承認申請も検討する価値があります。
| 書類名 | 提出期限 |
|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立後2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立後3か月以内または事業年度末のいずれか早い日 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設後1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時(従業員10人未満の場合推奨) |
3-3. 都道府県税事務所・市区町村への届出
法人設立後、設立後15日以内に都道府県税事務所・市区町村の税務担当課へ法人設立届出書を提出します。提出書類は自治体によって若干異なりますが、定款の写し・登記事項証明書の添付が一般的です。
4. 社会保険・労働保険の届出
従業員を雇用する場合、訪問看護開業では社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続きが必須です。
4-1. 年金事務所への届出(社会保険)
訪問看護ステーションを法人で設立する場合、社会保険への加入は義務です。法人設立後5日以内に健康保険・厚生年金保険新規適用届を年金事務所に提出します。従業員雇用後も、従業員ごとに被保険者資格取得届を提出する必要があります。
| 書類名 | 提出期限 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 法人設立後5日以内 |
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 従業員雇用後5日以内 |
| 健康保険 被扶養者(異動)届 | 従業員に被扶養者がいる場合 |
| 国民年金第3号被保険者 関係届 | 被扶養配偶者がいる場合 |
4-2. 労働基準監督署への届出(労災保険)
雇用発生後、労働基準監督署に労働保険関係成立届を提出します。この届出により労災保険が効力を持ちます。また、雇用発生後50日以内に労働保険概算保険料申告書を提出し、保険料を納付する手続きも進めます。
| 書類名 | 提出期限 |
|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 雇用発生後10日以内 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 雇用発生後50日以内 |
4-3. ハローワークへの届出(雇用保険)
訪問看護開業で雇用を開始する場合、ハローワークに雇用保険適用事業所設置届を提出します。設置後10日以内の提出が原則です。従業員の雇用契約後は、雇用保険被保険者資格取得届を翌月10日までに提出します。
| 書類名 | 提出期限 |
|---|---|
| 雇用保険 適用事業所設置届 | 設置後10日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | 雇用発生後翌月10日まで |
5. 雇用関係の届出(労基署・ハローワーク)
5-1. 就業規則の届出
常時10人以上の労働者を雇用する場合、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務です。10人未満の事業所であっても、労務トラブル予防の観点から作成を推奨します。
訪問看護開業の就業規則では、基本的な労働条件を明記する必要があります。始業・終業時刻や休憩時間、休日・休暇の定めが基本となります。同時に、賃金の決定・計算・支払方法、退職および解雇の事由も記載することが必須です。訪問看護ステーションの特性として、訪問手当・オンコール手当・夜間手当などの特殊な手当について、その支給基準を明確に定める必要があります。さらに服務規律と懲戒事由も含めることで、トラブル発生時の対応基準が明確になります。
5-2. 労使協定の届出
訪問看護事業では時間外労働やシフト制が一般的であるため、労使協定の届出が必要となる場合があります。法定時間を超える労働を命じる場合は36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届)を提出します。1か月単位または1年単位の変形労働時間制を採用する場合も同様に協定届の提出が必須です。
| 協定名 | 内容 |
|---|---|
| 36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届) | 法定時間を超える労働を命じる場合 |
| 変形労働時間制に関する協定届 | 1か月単位または1年単位の変形労働時間制を採用する場合 |
5-3. 労働条件通知書の交付
雇用契約締結時に、各従業員へ労働条件通知書を交付することが法律で定められています。訪問看護業界では、通常の雇用条件に加えて訪問業務に特有の項目が含まれます。訪問1件あたりの手当(訪問手当)、オンコール手当・夜間・休日訪問手当、移動時間・待機時間の取扱い、自家用車使用時のガソリン代・車両手当の支給基準などを明記することが重要です。
6. 事業開始後の各種届出
指定取得後も、訪問看護事業の運営にあたって各種届出が必要です。
6-1. 指定更新の届出
訪問看護ステーションの指定は6年ごとに更新が必要です。更新期限の6か月前〜直前期には、都道府県から通知が届きます。更新書類の準備には1〜2か月を要するため、更新期限の6か月前から準備を開始することが重要です。
6-2. 変更届
事業所の運営内容に変更があった場合、変更届の提出が必要です。事業所の名称・所在地が変更された場合は、変更後10日以内に届出を行います。管理者が交代した場合も同様に変更後10日以内に届出が必須です。従業者数の変動については月次報告や年次報告で対応することが一般的です。事業所の平面図に変更が生じる場合(増改築等)は、変更前に事前協議を実施します。運営規程の変更があった場合も、変更後10日以内に届出を行う必要があります。
| 変更内容 | 提出期限 |
|---|---|
| 事業所の名称・所在地変更 | 変更後10日以内 |
| 管理者の変更 | 変更後10日以内 |
| 従業者数の変動(一時的な減員含む) | 月次報告や年次報告で対応 |
| 事業所の平面図変更(増改築等) | 変更前に事前協議 |
| 運営規程の変更 | 変更後10日以内 |
6-3. 廃止・休止届
事業を廃止または休止する場合は、廃止日または休止日の1か月前までに都道府県へ廃止届または休止届を提出します。利用者への丁寧な説明と他事業所への引き継ぎを並行して進めることが重要です。
7. 書類作成の注意点と落とし穴
7-1. 常勤換算の計算ミス
従業者の勤務体制表で、常勤換算2.5人以上の人員配置を証明する必要があります。計算ミスで2.5人を下回ると、指定申請が受理されません。常勤換算値は、非常勤スタッフの勤務時間を合計し、常勤の所定労働時間(例: 週40時間)で割ったものです。詳細については人員基準と常勤換算の計算方法で解説しています。
7-2. 事業所平面図の不備
事務室・相談室・手洗い設備の配置が明確に区画されていない平面図は、差し戻しの対象になります。建築士または内装業者に作成を依頼することで、壁で区画されているか、独立した入口があるか、プライバシーが確保されるかを明記できます。
7-3. 協力医療機関との連携書類が間に合わない
連携候補医療機関との調整が遅れ、協力関係を示す書類(協定書・覚書)が間に合わないケースがあります。事業計画段階で連携候補医療機関にアポイントを取り、事前協議までに協定書案を準備しておくことが対策になります。
7-4. 印鑑・印鑑証明書の準備不足
法人設立・指定申請の多くの書類で、法人の実印と印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は発行3か月以内のものが求められる場合が多く、古いものは再取得が必要です。書類提出の直前に印鑑証明書を取得し、必要枚数を事前に確認しておくことが重要です。
7-5. 運営規程の記載漏れ
運営規程には、厚労省令で定められた項目をすべて含める必要があります。記載漏れがあると差し戻しになります。都道府県が公開している運営規程のひな形を活用し、事前協議で内容確認を受けることで、この問題を回避できます。
8. まとめ:開業届出チェックリスト
訪問看護ステーション開業時の届出書類を、提出先ごとに最終チェックします。
法人設立関連
- 法人設立登記申請書(法務局)
- 定款(事業目的に訪問看護事業を含む)
- 法人設立届出書(税務署・都道府県・市区町村)
- 青色申告の承認申請書(税務署)
- 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
社会保険・労働保険関連
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届(年金事務所)
- 労働保険保険関係成立届(労基署)
- 雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク)
- 就業規則(10人以上雇用時は労基署に届出)
- 36協定(時間外労働発生時)
指定申請関連(都道府県)
- 指定居宅サービス事業者指定申請書
- 登記事項証明書(発行3か月以内)
- 定款の写し
- 事業所平面図
- 事業所写真
- 賃貸借契約書の写し
- 管理者の経歴書・資格証
- 従業者の勤務体制表(常勤換算2.5人以上)
- 従業者の資格証
- 運営規程
- 苦情処理体制の概要
- 損害賠償保険加入証明書
- 協力医療機関との連携書類
- 役員名簿
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
医療保険の加算届出(地方厚生局)
- 24時間対応体制加算届出
- 特別管理加算Ⅰ・Ⅱ届出
- 機能強化型訪問看護管理療養費届出(該当事業所のみ)
- 訪問看護医療情報連携加算届出(2026年新設)
効率的な届出準備のポイント
開業届出の準備では、提出先ごとにフォルダを分けて書類を管理することで漏れを防げます。各窓口で共通して必要な書類(登記事項証明書・定款の写し等)は、複数部を同時に準備しておくと効率的です。指定申請書類の作成には、社会保険労務士や行政書士の活用も選択肢です。費用は10〜30万円程度ですが、書類の差し戻しによる開業遅延リスクを大幅に低減できます。
訪問看護の記録・請求業務を効率化したい場合は、看護レポの詳細はこちらをご覧ください。
訪問看護の記録・請求業務でお悩みですか? 看護レポなら、LINEで訪問記録を入力するだけ。AIが自動で要約し、管理者の確認もスマホで完結します。 まずは無料で試してみる
参考・出典
この記事をシェア
