訪問看護の開業届出に必要な書類一覧|申請先と記入例つき
訪問看護ステーション開業時の届出書類を、都道府県・地方厚生局・税務署・労基署ごとに一覧化。必要書類・記入例・提出期限・担当窓口を網羅した完全ガイドです。
訪問看護ステーション開業時の届出書類を、都道府県・地方厚生局・税務署・労基署ごとに一覧化。必要書類・記入例・提出期限・担当窓口を網羅した完全ガイドです。
訪問看護ステーション開業で発生しやすい失敗パターンを5つに整理。人員確保・資金繰り・営業・離職・請求業務の5領域の落とし穴と、廃業を防ぐための実務的対策を解説します。
2026年改定で新設された訪問看護医療情報連携加算(月1,000円)の算定要件・対象・届出様式・他加算との併算定・記録の書き方を解説。ICT連携の実務フローと返戻を防ぐチェックリスト付き。
訪問看護ステーションを開業したい——そう考えたときに、まず直面するのが「何から手をつければいいのか」という問いです。法人設立、人員確保、物件選定、指定申請……やるべきことは多岐にわたり、手順を誤ると開業予定が数か月単位でずれ込みます。
本記事では、訪問看護ステーション開業に必要な全ステップを時系列でまとめます。法人設立から指定取得までの標準的な期間は6〜9か月、資金準備期間も含めると約1年が目安です。各フェーズでの必要書類・期間・費用・よくある落とし穴を実務レベルで解説しますので、開業計画のロードマップとしてご活用ください。
開業の人員配置基準の詳細は訪問看護ステーションの人員基準と常勤換算の計算方法、開業後の収支シミュレーションは訪問看護ステーションの収支モデルと黒字化までの期間で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
開業までの主要ステップと標準期間を、時系列でまとめます。
| フェーズ | 期間 | 主な実施内容 |
|---|---|---|
| ① 事業計画・資金準備 | 1〜3か月 | 事業計画書作成、資金調達、市場調査 |
| ② 法人設立 | 2週間〜1か月 | 定款作成、登記申請、社会保険加入 |
| ③ 人員確保 | 1〜3か月 | 看護師採用、管理者決定、勤務条件調整 |
| ④ 物件・設備 | 1〜2か月 | 事業所物件契約、内装工事、設備調達 |
| ⑤ 指定申請・事前協議 | 2〜3か月 | 都道府県への事前協議、指定申請書類提出 |
| ⑥ 指定取得・運営開始 | 1か月 | 指定日確定、運営体制整備、利用者受け入れ |
| 合計 | 6〜9か月 | 法人設立済みなら最短6か月 |
訪問看護ステーションの開業は、都道府県知事からの「指定」を受けることがゴールです。指定を受けるためには、介護保険法・健康保険法に基づく指定基準をすべて満たす必要があります。
指定基準は以下の3つの柱で構成されています。
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| ① 人員基準 | 常勤看護職(保健師・看護師・准看護師)2.5人以上、管理者1人(看護師または保健師で常勤) |
| ② 設備基準 | 事業所スペース(事務室・相談室・手洗い設備)、訪問に必要な設備・備品 |
| ③ 運営基準 | サービス提供マニュアル、記録管理体制、利益供与の禁止、守秘義務遵守 |
訪問看護ステーションの開業主体は、法人格を有する必要があります。個人事業主では開業できません。法人の形態は問われず、株式会社・合同会社・一般社団法人・医療法人・NPO法人・社会福祉法人など、いずれも可能です。
ただし、すでに医療機関や社会福祉法人がある場合は、既存法人のもとで訪問看護事業部として開設することも可能です。この場合、法人設立のステップを省略できます。
開業の最初のステップは、事業計画書の作成です。事業計画書は、以下の視点から検討します。
① 市場調査
② サービス内容
③ 収支計画
収支モデルの具体的な試算方法は訪問看護ステーションの収支モデルで詳しく解説しています。
開業に必要な初期資金の目安は500万〜1,500万円です。内訳は本記事第8章に掲載しています。
主な資金調達手段:
日本政策金融公庫は、創業時の無担保・無保証人での融資実績が豊富なため、訪問看護ステーション開業でも活用されることが多い選択肢です。
市場調査では、以下のデータを必ず確認します。
| 調査項目 | 情報源 |
|---|---|
| 高齢者人口・要介護認定者数 | 市区町村の介護保険事業計画 |
| 既存ステーション数 | 都道府県の事業所検索システム(WAM NET) |
| 在宅医療の提供体制 | 在宅医療・介護連携推進事業の資料 |
| 連携候補医療機関 | 近隣の訪問診療クリニック・地域包括支援センター |
訪問看護ステーション開業で最も選ばれる法人形態は以下の3つです。
| 形態 | 設立費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 25〜30万円 | 社会的信用が高い、将来的な資金調達がしやすい |
| 合同会社 | 10〜15万円 | 設立費用が安い、運営の柔軟性が高い |
| 一般社団法人 | 13〜15万円 | 非営利志向、公益的事業として運営したい場合 |
小規模ステーションでは、設立費用を抑えられる合同会社が選ばれるケースが増えています。
法人設立は以下の手順で進めます(株式会社の場合)。
所要期間は2週間〜1か月です。行政書士・司法書士に依頼する場合は3〜5万円程度の追加費用が発生しますが、書類作成ミスを防げるメリットがあります。
事業目的には、以下を必ず含めてください。
事業目的に訪問看護事業が明記されていないと、指定申請時に指摘を受け、定款変更登記のやり直しが必要になります。
訪問看護ステーションの指定を受けるためには、以下の人員配置が必須です。
| 職種 | 人員基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 看護職員 | 常勤換算で2.5人以上 | 保健師・看護師・准看護師の合計 |
| 管理者 | 1人(常勤・保健師または看護師) | 看護職員と兼務可 |
| 理学療法士等 | 必要に応じて配置 | PT・OT・ST(配置は任意) |
常勤換算の計算方法は人員基準と常勤換算の計算方法で詳しく解説しています。
管理者は、保健師または看護師であることが必須です(准看護師は不可)。加えて、以下の経験・知識が求められます。
管理者を外部から採用する場合、年収500〜700万円が相場です。
看護職員の採用は以下の経路を組み合わせます。
| 採用経路 | メリット | 費用感 |
|---|---|---|
| 人材紹介会社 | 即戦力を短期間で確保 | 年収の20〜30% |
| 求人サイト(ナース専門) | 母集団形成が可能 | 月額10〜30万円 |
| ハローワーク | 無料 | 0円 |
| 知人紹介・リファラル | 文化適合性が高い | お祝い金5〜10万円 |
| 訪問看護経験者のネットワーク | 即戦力かつミスマッチ低 | 謝礼程度 |
小規模開業では、管理者の人脈を軸にリファラル採用で開業メンバーを集めるケースが多いです。
採用が決まったら、以下を整備します。
開業初期は常時10人未満のため就業規則の届出義務はありませんが、労務トラブル予防のため作成を推奨します。
事業所物件には以下の要件があります。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| スペース | 事務室・相談室(プライバシー確保)・手洗い設備の設置が可能 |
| 場所 | 訪問エリアの中心に近い、車でのアクセスが良好 |
| 駐車場 | 訪問用車両の駐車スペース確保(最低2台) |
| 用途地域 | 第一種低層住居専用地域は不可の場合あり(自治体要確認) |
| 面積 | 一般的に30〜50㎡(相談室は個室として区画可能であること) |
開業地域の都道府県・保健所によっては、事業所面積の最低基準が定められている場合があります。物件契約前に必ず所轄窓口へ事前確認してください。
| カテゴリ | 具体例 | 費用目安 |
|---|---|---|
| オフィス設備 | デスク・椅子・書庫・パソコン・プリンター・電話・ネット回線 | 50〜100万円 |
| 訪問用車両 | 軽自動車2〜3台(リース推奨) | 月3〜5万円/台 |
| 医療機器・看護用品 | 血圧計・体温計・SpO2計・体重計・医療廃棄物容器 | 30〜50万円 |
| 記録システム | 訪問看護記録・請求ソフト | 月0〜3万円 |
| 消耗品 | 手袋・マスク・消毒液・PPE | 月3〜5万円 |
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都道府県・政令指定都市の多くは、指定申請の前に事前協議を設けています。事前協議では、以下を確認されます。
事前協議は指定希望月の3か月前までに実施するのが一般的です(自治体により異なります)。
指定申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 指定申請書 | 所定様式、事業所情報・運営方針を記載 |
| 法人の登記事項証明書 | 発行3か月以内 |
| 定款または寄附行為 | 事業目的に訪問看護事業を含むもの |
| 管理者の経歴書・資格証の写し | 保健師または看護師免許・職歴 |
| 従業者の勤務体制表 | 常勤換算2.5人以上の人員配置を証明 |
| 従業者全員の資格証の写し | 看護職員の免許 |
| 事業所の平面図 | 事務室・相談室・手洗い設備の配置 |
| 事業所の写真 | 外観・内部・設備 |
| 運営規程 | サービス内容・料金・利用者の権利等 |
| 利用者からの苦情処理体制 | 苦情受付窓口・処理手順 |
| 損害賠償保険加入証明書 | 事業者向け損害賠償保険 |
| 協力医療機関との連携体制を示す書類 | 協定書・覚書等 |
| 保険種別 | 提出先 | 審査期間 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 都道府県(または政令指定都市・中核市) | 1〜2か月 |
| 健康保険 | 地方厚生局 | 1〜2か月 |
介護保険と医療保険の両方で訪問看護を提供するためには、介護保険の指定を受けると、健康保険の訪問看護事業者としてみなし指定される仕組みになっています(みなし指定)。そのため、介護保険の指定を先に取得するのが一般的です。
書類審査を通過すると、指定日が通知されます。指定日は通常、申請書類受理月の翌月1日または翌々月1日です。指定日以降でなければサービス提供・報酬算定ができません。
指定取得後、運営開始までに以下を整備します。
開業直後の利用者獲得は、以下の経路を組み合わせます。
| 営業先 | 目的 |
|---|---|
| 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) | 介護保険利用者の紹介 |
| 在宅医療クリニック・地域の診療所 | 医療保険利用者の紹介 |
| 地域包括支援センター | 要支援者・地域のつながり |
| 病院の医療連携室(退院支援担当) | 退院直後の利用者紹介 |
| 行政の介護保険担当課 | 相談窓口としての認知獲得 |
開業初月の利用者数は5〜10人程度が目安です。損益分岐点の利用者数は収支モデルで詳しく解説しています。
請求業務ではレセプト返戻が発生しやすいため、返戻対策の事前理解をおすすめします。
訪問看護ステーションの開業費用の目安を、内訳で整理します。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 法人設立費用 | 10〜30万円 |
| 事業所の敷金・礼金 | 30〜100万円 |
| 内装工事 | 20〜100万円 |
| 備品(オフィス・医療機器) | 50〜150万円 |
| 訪問用車両(購入の場合) | 100〜300万円 |
| 看板・広告 | 10〜50万円 |
| 指定申請手数料等 | 5〜10万円 |
| 初期投資 合計 | 約225〜740万円 |
開業後すぐには売上入金がないため(介護保険は2か月後入金)、最低3か月・可能であれば6か月分の運転資金を準備します。
| 項目 | 月額目安 | 3〜6か月分 |
|---|---|---|
| 人件費(管理者+看護職員3人) | 120〜200万円 | 360〜1,200万円 |
| 家賃 | 10〜20万円 | 30〜120万円 |
| 水道光熱費・通信費 | 3〜5万円 | 9〜30万円 |
| 車両リース・燃料 | 10〜15万円 | 30〜90万円 |
| その他消耗品 | 5〜10万円 | 15〜60万円 |
| 運転資金 小計 | 148〜250万円 | 444〜1,500万円 |
| 資金使途 | 金額レンジ |
|---|---|
| 初期投資 | 225〜740万円 |
| 運転資金(3〜6か月) | 444〜1,500万円 |
| 開業資金 総額 | 約670〜2,240万円 |
実務上の最低ライン: 500万〜800万円を自己資金+融資で確保できると、開業後の資金繰りが安定します。
開業準備で発生しがちな失敗と、その対策を整理します。
看護職員2.5人の確保に時間がかかり、指定申請が予定より2〜3か月遅れるケースが頻発します。
対策: 管理者を先に確定させ、管理者の人脈を活用したリファラル採用を軸にする。人材紹介会社も並行活用する。
契約後に「第一種低層住居専用地域で訪問看護事業所は不可」と判明し、物件契約のやり直しが発生します。
対策: 物件契約前に必ず自治体の建築指導課・介護保険担当課に用途地域の適合性を確認する。
既存法人を活用する場合、定款の事業目的に訪問看護事業が含まれていないと、指定申請前に定款変更登記が必要になります(2〜3週間の追加期間)。
対策: 既存法人活用の場合は、事業目的を最初に確認し、不足していれば早期に定款変更登記を行う。
介護保険の報酬入金はサービス提供月の翌々月です。つまり開業後2か月は一切入金がない状態で人件費・家賃を支払い続けます。見積もり不足で資金繰りが行き詰まるケースがあります。
対策: 運転資金は最低3か月分、可能なら6か月分を確保。日本政策金融公庫の運転資金融資も併用する。
指定申請時に「協力医療機関との連携体制を示す書類」が必要ですが、連携候補の医療機関との調整が遅れるケースがあります。
対策: 事業計画段階で、連携候補の医療機関と早期にアポイントをとる。事前協議までに協定書・覚書の案を準備する。
訪問看護ステーション開業の各フェーズで、必ず確認すべき項目をまとめます。
訪問看護ステーションの開業は、人員確保と資金調達の2点が最大の山場です。この2点を計画的に進めれば、6〜9か月での開業は十分に実現可能です。
開業後は、黒字化までの期間(一般的に6〜12か月)を乗り切る運転資金管理と、離職防止によるスタッフの安定確保が経営課題になります。黒字化までの収支モデルは収支モデル解説記事で、離職防止策は離職防止の実務で詳しく解説しています。
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