訪問看護 医療保険レセプトの書き方と点検チェックリスト
訪問看護の医療保険レセプト(訪問看護療養費明細書)の正しい記載方法を、記載例と点検チェックリストで解説します。よくある記載ミスTOP10とその防止策、2026年改定対応、国保連フォーマットへの転記ミス削減策まで網羅した管理者・事務担当者向けガイドです。
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訪問看護の医療保険レセプト(訪問看護療養費明細書)の正しい記載方法を、記載例と点検チェックリストで解説します。よくある記載ミスTOP10とその防止策、2026年改定対応、国保連フォーマットへの転記ミス削減策まで網羅した管理者・事務担当者向けガイドです。
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「この利用者さん、介護保険で請求すべき?それとも医療保険?」
訪問看護ステーションの現場では、新しい利用者を受け入れるたびにこの判断が必要です。誤った振り分けはその月の請求が全額返戻になります。「なんとなく介護保険で請求してきた」「同僚に聞いたら医療保険だと言われた」——そうした曖昧な判断が、毎月の請求業務を不安定にしています。
訪問看護の保険振り分けには、年齢・疾患・要介護認定の有無・医師の指示書の種類など、複数の要素が絡み合います。ひとつひとつのルールを体系的に把握しておけば、ほとんどのケースは迷わず判断できるようになります。
本記事では、介護保険と医療保険の振り分け判断を段階的なフローチャートで整理し、別表第7・別表第8の疾患一覧、月途中の保険切り替え手順、同日算定の特例ルールまで解説します。 よくある判断ミス事例も含め、実務に直結する情報を網羅的に解説します。
訪問看護の保険振り分けを誤ると、その月の請求が全額返戻になります。単に特定の加算が認められないという話ではありません。介護保険で請求すべき利用者を医療保険で請求した場合、または医療保険が適用されるべき利用者を介護保険で請求した場合、ゼロから請求をやり直すことになります。
返戻になれば入金が遅れ、再請求にかかる事務コストも発生します。同じ誤りが複数月にわたって続いていた場合、過去にさかのぼって全月分の返戻が発生するリスクもあります。
詳しい返戻対策については「訪問看護レセプトの返戻を完全攻略:原因TOP10チェックリストと再請求マニュアル【2026年版】」もあわせてご確認ください。医療保険のレセプト(訪問看護療養費明細書)の正しい記載方法と点検チェックリストは「訪問看護 医療保険レセプトの書き方と点検チェックリスト」で詳しく解説しています。
介護保険と医療保険では、単に請求先が違うだけでなく、算定の単位・金額・使える加算の種類が根本的に異なります。
| 比較項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 費用の単位 | 介護報酬(単位×地域単価) | 訪問看護療養費(円) |
| 請求先 | 国民健康保険団体連合会(国保連) | 社会保険診療報酬支払基金 or 国保連 |
| 週の訪問回数 | 制限なし(支給限度額内) | 週3日まで(特例を除く) |
| 1回の訪問時間区分 | 20分未満・20〜30分・30〜60分・60〜90分など | 原則30分以上(長時間加算は90分超) |
| 加算体系 | 介護保険版の加算(緊急時加算・特別管理加算等) | 医療保険版の加算(難病等複数回訪問加算・長時間訪問看護加算等) |
| 自己負担 | 1〜3割(所得に応じ) | 1〜3割(所得に応じ)+高額療養費制度 |
誤った保険で算定し続けると、適切な加算が請求できないまま事業所が損失を抱えることにもなります。
保険の種類によって利用者の自己負担額も変わります。たとえば難病患者向けの医療費助成(特定医療費)は医療保険での訪問看護に適用されます。介護保険で請求してしまうと、利用者が受けられるはずの助成が受けられなくなり、クレームや信頼喪失につながります。
介護保険と医療保険の双方が使える可能性がある場合、原則として介護保険が優先されます。
根拠:介護保険法 第7条・第21条
「要介護認定または要支援認定を受けている人が、訪問看護を必要とする場合は介護保険を使う」というのが基本的な考え方です。
以下のいずれかに該当する場合は、介護保険ではなく医療保険が適用されます。
例外① 年齢が39歳以下
介護保険の被保険者は40歳以上です。39歳以下は介護保険の対象外のため、訪問看護は医療保険で提供します。
例外② 40〜64歳で特定疾病(16疾病)以外の疾患がある
40〜64歳(第2号被保険者)は、介護保険が適用されるのは「特定疾病」が原因で要介護・要支援状態になった場合のみです。特定疾病以外の疾患では介護保険の対象になりません。
例外③ 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する
要介護・要支援の認定を受けていても、別表第7(20疾患等)に該当する場合は医療保険が優先されます。これが最も判断を複雑にするルールです。
例外④ 精神科訪問看護指示書が交付された
精神科の主治医から精神科訪問看護指示書が交付された場合は、医療保険(精神科訪問看護療養費)が適用されます。
例外⑤ 急性増悪等で特別訪問看護指示書が交付された
介護保険で訪問看護を受けている利用者でも、急性増悪・退院直後などで主治医から特別訪問看護指示書が交付された期間は、医療保険に切り替わります。
「介護保険優先」とは「介護保険が使えるなら必ず介護保険」という絶対ルールではありません。正確には「介護保険の給付対象になっているサービスは、まず介護保険で請求する」という意味です。
介護保険の給付限度額を超えた部分や、介護保険の対象外の医療行為については、別途医療保険での算定が可能なケースがあります(ただし同一サービスの重複算定は不可)。
新規利用者の受け入れ時や保険種別に迷う場面で活用できる判断フローです。年齢・認定状況・疾病名・特別指示書の有無という4つの確認ポイントを順番に辿ることで、介護保険か医療保険かを正確に特定できます。以下のステップに沿って判断を進めてください。印刷・チーム共有にも活用できます。
訪問看護の依頼が来た
↓
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【STEP 1】利用者の年齢を確認する
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↓
┌──────────┬──────────────┐
↓ ↓ ↓
39歳以下 40〜64歳 65歳以上
↓ ↓ ↓
【医療保険】 【STEP 2へ】 【STEP 3へ】
(介護保険
の対象外)
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【STEP 2】40〜64歳:介護保険の被保険者資格を確認
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「要介護・要支援認定を受けているか」を確認
※特定疾病(16疾病)が原因で認定を受けた場合のみ介護保険の対象
↓
┌────────────────┐
↓ ↓
認定あり(特定疾病が原因) 認定なし or 特定疾病以外が原因
↓ ↓
【STEP 4へ】 【医療保険】
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【STEP 3】65歳以上:要介護・要支援認定の有無を確認
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↓
┌────────────────┐
↓ ↓
認定あり 認定なし
↓ ↓
【STEP 4へ】 【医療保険】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【STEP 4】別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)の該当確認
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※STEP 4到達時点では「介護保険の被保険者で要介護・要支援認定あり」
主病名・状態を別表第7(20疾患等)と照合する
↓
┌────────────────┐
↓ ↓
該当あり 該当なし
↓ ↓
【医療保険】 【STEP 5へ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【STEP 5】精神科訪問看護指示書の有無を確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
↓
┌────────────────┐
↓ ↓
精神科訪問看護指示書あり 精神科訪問看護指示書なし
↓ ↓
【医療保険】 【STEP 6へ】
(精神科訪問看護療養費)
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【STEP 6】特別訪問看護指示書の有無を確認
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
↓
┌────────────────┐
↓ ↓
特別訪問看護指示書あり 特別訪問看護指示書なし
↓ ↓
【医療保険】 【介護保険】
(指示期間内のみ)
このフローチャートで判断できないケースは、担当の地域行政機関または国保連のQ&A・審査係に問い合わせることをおすすめします。
39歳以下の方は介護保険の被保険者ではないため、訪問看護は医療保険で提供します。例外はありません。
40〜64歳(介護保険の第2号被保険者)は、介護保険が適用されるのは「特定疾病(16疾病)」が原因で要介護・要支援状態になった場合に限られます。
介護保険の特定疾病(16疾病)
| # | 疾病名 |
|---|---|
| 1 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
| 2 | 後縦靭帯骨化症 |
| 3 | 骨折を伴う骨粗鬆症 |
| 4 | 多系統萎縮症 |
| 5 | 初老期における認知症 |
| 6 | 脊髄小脳変性症 |
| 7 | 脊柱管狭窄症 |
| 8 | 早老症 |
| 9 | 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症 |
| 10 | 脳血管疾患 |
| 11 | パーキンソン病関連疾患 |
| 12 | 閉塞性動脈硬化症 |
| 13 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) |
| 14 | 関節リウマチ |
| 15 | 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
| 16 | がんの末期 |
特定疾病以外(例:事故による脊髄損傷、精神疾患単独など)が原因で要介護状態になっている場合は、40〜64歳であっても医療保険が適用されます。
なお、「特定疾病あり→要介護認定あり」の人でも、別表第7に該当する疾患を持つ場合は医療保険が優先されます(STEP 4の判断が続きます)。
65歳以上は介護保険の第1号被保険者です。要介護・要支援認定を受けていれば原則介護保険、受けていなければ医療保険が適用されます。
ただし、要介護認定を受けていても以下の場合は医療保険が優先されます。
要支援1・2の方の注意点
要支援1・2の方は「予防給付」の対象であり、訪問看護は「介護予防訪問看護」として介護保険で提供するのが原則です。ただし別表第7に該当する場合は、要支援者でも医療保険が優先されます。
「別表第7」とは、「厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療料の施設基準等別表第七号)」を指します。この疾病等に該当する利用者は、要介護・要支援認定を受けていても、訪問看護は医療保険で提供されます。
根拠:「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(厚生労働省告示)
| # | 疾病・状態名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1 | 末期の悪性腫瘍(がん末期) | 医師が治癒困難と判断した状態 |
| 2 | 多発性硬化症 | 神経難病。指定難病No.13 |
| 3 | 重症筋無力症 | 神経筋疾患。指定難病No.11 |
| 4 | スモン(亜急性脊髄視神経症) | キノホルム中毒による神経疾患 |
| 5 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 運動神経が変性する難病 |
| 6 | 脊髄小脳変性症 | 小脳・脊髄の変性疾患 |
| 7 | ハンチントン病 | 遺伝性の神経変性疾患 |
| 8 | 進行性筋ジストロフィー症 | 筋肉が進行性に壊れる遺伝性疾患 |
| 9 | パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病※) | ※ホーエン・ヤール3度以上かつ生活機能障害度II度以上 |
| 10 | 多系統萎縮症(線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群) | 自律神経障害を伴う神経変性疾患 |
| 11 | プリオン病 | 異常プリオン蛋白による脳疾患 |
| 12 | 亜急性硬化性全脳炎 | 麻疹ウイルスによる遅発性脳炎 |
| 13 | ライソゾーム病 | 酵素欠損による遺伝性疾患 |
| 14 | 副腎白質ジストロフィー | X連鎖遺伝性の神経疾患 |
| 15 | 脊髄性筋萎縮症 | 運動神経細胞が変性する遺伝性疾患 |
| 16 | 球脊髄性筋萎縮症 | X連鎖性の運動神経疾患 |
| 17 | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 | 末梢神経の炎症性疾患 |
| 18 | 後天性免疫不全症候群(AIDS) | HIV感染による免疫疾患 |
| 19 | 頸髄損傷 | 頸部脊髄の損傷 |
| 20 | 人工呼吸器を使用している状態 | 疾患名にかかわらず、人工呼吸器装着者は全員該当 |
出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別表第七号
別表第7に該当する場合、以下の特例が認められます。
訪問回数の特例
パーキンソン病の判断基準
パーキンソン病は「ホーエン・ヤール重症度分類3度以上かつ生活機能障害度II度以上」という条件が付いています。パーキンソン病というだけで自動的に別表第7に該当するわけではないため、診断書や訪問看護指示書で重症度を必ず確認してください。
「末期の悪性腫瘍」の判断基準
「末期の悪性腫瘍」は主治医が「治癒が困難な状態にある」と判断した場合に限られます。ステージ4と診断されていても、治療を継続して寛解を目指している場合は「末期」と判断されないこともあります。必ず訪問看護指示書・診断書で主治医の判断を確認してください。
「別表第8」とは、「厚生労働大臣が定める状態等(特掲診療料の施設基準等別表第八号)」を指します。
別表第7が「疾患名」で医療保険適用を決めるのに対し、別表第8は「状態・医療管理の必要性」で判断します。
重要な違い:別表第8は「医療保険への切り替え」を意味しない
別表第8に該当する状態であっても、要介護・要支援認定を受けている利用者は原則として介護保険が適用されます。ただし、別表第8に該当すると訪問回数の制限緩和などの特例が認められます(介護保険での訪問においても)。
別表第8の利用者が医療保険に切り替わるのは、別表第7に同時該当する場合や、特別訪問看護指示書が交付された場合に限られます。
| # | 状態・管理内容 |
|---|---|
| 1 | 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態 |
| 2 | 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態 |
| 3 | 気管カニューレを使用している状態 |
| 4 | 留置カテーテルを使用している状態 |
| 5 | 在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている状態 |
| 6 | 在宅血液透析指導管理を受けている状態 |
| 7 | 在宅酸素療法指導管理を受けている状態 |
| 8 | 在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている状態 |
| 9 | 在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている状態 |
| 10 | 在宅自己導尿指導管理を受けている状態 |
| 11 | 在宅人工呼吸指導管理を受けている状態 |
| 12 | 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている状態 |
| 13 | 在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態 |
| 14 | 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態 |
| 15 | 人工肛門または人工膀胱を設置している状態 |
| 16 | 真皮を超える褥瘡の状態 |
| 17 | 在宅点滴注射による薬物療法を行っている状態 |
| 18 | 在宅麻薬等注射指導管理を受けている状態(2024年改定で追加) |
| 19 | 在宅抗菌薬等注射指導管理を受けている状態(2024年改定で追加) |
| 20 | 在宅強心剤持続注射指導管理を受けている状態(2024年改定で追加) |
出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」別表第八号(令和6年4月改定後)
令和6年(2024年)4月の診療報酬改定で、別表第8に3つの在宅指導管理が追加されました。
これらの管理を受けている患者は、医療的な管理ニーズが高いことから、特例的な訪問回数が認められるようになりました。
別表第8に該当し、介護保険で訪問看護を行う場合も、以下の特例があります。
2時間ルールの例外については「訪問看護の2時間ルール:例外ケースと算定ミス防止策」で詳しく解説しています。
特別訪問看護指示書は、介護保険で訪問看護を受けている利用者に対して、急性増悪・退院直後・終末期などの理由から、一時的に医療保険での訪問看護が必要と主治医が判断した場合に交付される指示書です。
特別訪問看護指示書が交付された期間は、介護保険の利用者でも医療保険での請求になります。
| 項目 | 通常の特別訪問看護指示書 | 気管カニューレ・真皮を超える褥瘡への特別指示 |
|---|---|---|
| 交付回数 | 月1回 | 月2回まで可能 |
| 有効期間 | 1回につき最大14日間 | 1回につき最大14日間 |
| 対象 | 急性増悪・退院直後・終末期など | 気管カニューレ装着・真皮超え褥瘡(Grade III以上)など |
同一月内で、介護保険の訪問と医療保険(特別指示書期間)の訪問が混在する場合の算定は以下のようになります。
同月内で介護保険・医療保険のレセプトが別々に発生することになるため、日ごとの区分を正確に記録しておくことが欠かせません。
精神疾患(統合失調症・うつ病・双極性障害など)を主病名とする利用者で、精神科の主治医から精神科訪問看護指示書が交付された場合は、医療保険(精神科訪問看護療養費)で算定します。
介護保険の要介護・要支援認定を受けていても、精神科訪問看護指示書がある場合は医療保険が適用されます。
| 項目 | 通常の訪問看護療養費 | 精神科訪問看護療養費 |
|---|---|---|
| 指示書 | (通常の)訪問看護指示書 | 精神科訪問看護指示書 |
| 訪問者 | 看護師・准看護師・理学療法士等 | 精神科経験のある看護師・作業療法士・精神保健福祉士等 |
| 主な加算 | 特別管理加算・長時間加算等 | 精神科緊急訪問看護加算・精神科複数回訪問加算等 |
| 月初算定 | 訪問看護管理療養費(月1日目) | 同左 |
精神科訪問看護の詳しい算定要件については「精神科訪問看護 算定・加算ガイド【2024年改定対応】」をご参照ください。
精神疾患と身体疾患の双方を持つ利用者の場合、主病名によって判断が変わります。
精神科訪問看護指示書と通常の訪問看護指示書の両方が同一月に存在する場合は、原則として**精神科訪問看護指示書の交付を受けた訪問は医療保険(精神科訪問看護)**で算定します。同月内で通常の訪問看護との混在算定には制限があるため、詳細は地域の審査機関に確認が必要です。
| 項目 | 原則ルール | 特例(別表第7・特別指示書等) |
|---|---|---|
| 週の訪問日数 | 週3日まで | 週4日以上も可 |
| 1日の訪問回数 | 原則1回 | 複数回可(同一ステーション・複数ステーション) |
| 1回の訪問時間 | 原則30分以上 | 長時間訪問看護加算:90分超 |
| 複数ステーション | 通常1か所 | 別表第7等では最大3か所まで |
| 項目 | ルール | 備考 |
|---|---|---|
| 週の訪問日数 | 制限なし | 支給限度額の範囲内 |
| 1日の訪問回数 | 原則1回 | 別表第8等では複数回可 |
| 1回の訪問時間区分 | 20分未満・20〜30分・30〜60分・60〜90分など | 時間区分によって報酬が異なる |
| 2時間ルール | 同一ステーションの同日2回目訪問は2時間以上空けること | 例外規定あり |
| 複数ステーション | 2か所まで可(介護保険の場合) | 計画に基づく必要あり |
| 加算の種類 | 医療保険版 | 介護保険版 |
|---|---|---|
| 緊急時訪問 | 緊急訪問看護加算 | 緊急時訪問看護加算(574単位/月) |
| 特別管理 | 特別管理加算(月1回):2,500円または5,000円 | 特別管理加算(I):500単位/月または(II)250単位/月 |
| 長時間訪問 | 長時間訪問看護加算(90分超) | 長時間訪問看護加算(60分超) |
| 複数名訪問 | 複数名訪問看護加算(看護師+准看護師など) | 複数名訪問看護加算(I)〜(IV) |
加算の詳細については「訪問看護 加算一覧【2024年改定対応】介護・医療保険を完全網羅」を参照してください。
実際の利用者のプロフィールをもとに、保険振り分けの判断結果と根拠を示します。フローチャートを「使って解くもの」として理解するための事例集です。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: ALSは別表第7(第5号)に該当します。75歳で要介護3の認定を受けていても、ALSは別表第7疾患であるため医療保険が優先されます。
算定上の特例: 別表第7該当のため、週4日以上の訪問、同日複数回訪問、複数ステーションからの訪問(最大3か所)が認められます。
プロフィール
判断結果:介護保険
根拠: 65歳以上で要介護認定あり。2型糖尿病単独は別表第7に該当しません。インスリン自己注射も別表第8の対象ですが、別表第8は介護保険から医療保険への切り替えを意味しません。よって介護保険での算定となります。
注意点: 別表第8(在宅自己疼痛管理等)に該当する状態があれば、週4日以上の訪問などの特例が認められる可能性があります。担当ケアマネに確認し、介護保険のプランに組み込みます。
プロフィール
判断結果:医療保険(精神科訪問看護療養費)
根拠: 45歳で要介護認定を受けていません(精神疾患は介護保険の特定疾病16疾病に含まれないため)。また精神科訪問看護指示書が交付されているため、医療保険(精神科訪問看護)で算定します。
注意点: 精神科経験のある看護師・作業療法士・精神保健福祉士による訪問が必要です。一般の訪問看護師が訪問した場合は精神科訪問看護療養費を算定できません。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 62歳で特定疾病(第16号「がんの末期」)により要介護認定を受けています。かつ、別表第7第1号「末期の悪性腫瘍」に該当します。別表第7に該当するため、要介護認定があっても医療保険が優先されます。
算定上の特例: 別表第7該当のため週4日以上の訪問、同日複数回訪問が可能です。緩和ケアの文脈では毎日または週5〜7日の訪問が必要なケースも多く、この特例が重要になります。
プロフィール
判断結果:有効期間内は医療保険、期間終了後は介護保険
根拠: 82歳で要介護4の認定あり、別表第7非該当のため通常は介護保険です。しかし退院直後の急性増悪を理由に特別訪問看護指示書が交付されたため、有効期間の14日間は医療保険で算定します。14日経過後は介護保険に戻ります。
実務対応のポイント: 特別指示書の有効期間を日単位で管理し、期間終了日を必ず記録します。期間終了後に誤って医療保険で算定し続けると返戻になります。
プロフィール
判断結果:介護保険(介護予防訪問看護)
根拠: 70歳で要支援2の認定あり、別表第7非該当のため介護保険が適用されます。要支援者向けの訪問看護は「介護予防訪問看護」として算定します。
注意点: 要支援者向けの介護予防訪問看護は、要介護者向けとは報酬が異なります。また要支援者でも別表第7に該当すれば医療保険が優先されます。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 35歳は介護保険の対象外(39歳以下)です。医療保険で算定します。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 78歳で要介護5の認定あり。「人工呼吸器を使用している状態」は別表第7第20号に該当します。疾患名(筋ジストロフィー)が別表第7に含まれなくても、人工呼吸器使用者は全員別表第7に該当するため医療保険が優先されます。
実務のポイント: 「人工呼吸器使用」は状態による該当であり、人工呼吸器の種類(侵襲的・非侵襲的の別)を問いません。在宅で人工呼吸器を使用しているすべての利用者が対象です。
プロフィール
判断結果:介護保険
根拠: 55歳で特定疾病(パーキンソン病関連疾患)による要介護3。別表第7の「パーキンソン病関連疾患」には条件があり、「ホーエン・ヤール3度以上かつ生活機能障害度II度以上」が必要です。本ケースはホーエン・ヤール2度・生活機能障害度I度のため別表第7に該当せず、介護保険での算定になります。
重要な注意点: パーキンソン病は「病名があるだけで別表第7に該当する」と誤解されやすいです。重症度の条件を必ず確認してください。
プロフィール
判断結果:医療保険(認定後も医療保険を継続)
根拠: 73歳ですが、要介護認定の申請中で認定は出ていません。認定が出るまでは「認定なし」として扱い、医療保険で算定します。また「頸髄損傷」は別表第7(第19号)に該当するため、認定が下りた後も医療保険が優先されます。
プロフィール
判断結果:介護保険(ただし別表第8特例あり)
根拠: 64歳で糖尿病性腎症による要介護認定あり。別表第8の在宅血液透析指導管理に該当しますが、別表第8は介護保険から医療保険への切り替えを意味しません。よって介護保険での算定となります。ただし別表第8特例として週4日以上の訪問等が認められます。
プロフィール
判断結果:介護保険
根拠: 88歳で要介護4の認定あり。アルツハイマー型認知症は別表第7の「初老期における認知症」に当たりません(「初老期における認知症」は40〜64歳の介護保険特定疾病の扱い)。65歳以上の認知症は別表第7・別表第8いずれにも非該当のため、介護保険での算定です。
注意点: 「認知症だから特別」という思い込みで医療保険を選択するミスが見られます。高齢者の認知症は原則介護保険です。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 50歳で要介護認定なし。多発性硬化症は別表第7(第2号)に該当するため医療保険が優先されます。仮に要介護認定を取得していても、多発性硬化症は別表第7に該当するため医療保険が適用されます。
プロフィール
判断結果:介護保険(ただし別表第8特例あり)
根拠: 77歳で要介護3の認定あり、別表第7非該当。褥瘡(真皮を超える状態)は別表第8に該当しますが、これは医療保険への切り替えを意味しません。介護保険での算定となります。ただし別表第8特例(週4日以上の訪問・同日複数回訪問)が認められます。
特別管理加算の算定: 褥瘡ケアが必要な状態として、介護保険版の特別管理加算(II)の算定が可能です。
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判断結果の推移:
実務対応の注意点: 65歳誕生日が来るだけでは保険は変わりません。要介護認定通知が届いた日が切り替えの基準日です。切り替え月は2種類のレセプトを作成することになります。
プロフィール
判断結果:介護保険
根拠: 42歳で関節リウマチ(特定疾病)による要介護1の認定あり。別表第7非該当、特別指示書なし、精神科指示書なしのため介護保険での算定となります。
注意点: 「42歳だから医療保険」という誤判断が起きやすいです。40〜64歳でも特定疾病が原因で要介護認定を受けていれば介護保険が適用されます。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 80歳で要介護5の認定あり。しかし後天性免疫不全症候群(AIDS)は別表第7(第18号)に該当するため、医療保険が優先されます。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 58歳で要介護認定なし。COPDは介護保険の特定疾病(第13号)ですが、要介護認定を受けていないため医療保険での算定です。在宅酸素療法(別表第8)の状態にあっても、医療保険の適用には影響しません(医療保険の中での特例として訪問回数等が緩和される)。
プロフィール
判断結果:確定診断後は医療保険に切り替え
根拠: 多発性硬化症は別表第7(第2号)に該当します。当初は診断名が確定していなかったため介護保険で算定していましたが、確定診断後は医療保険に切り替えます。
切り替えのタイミング: 確定診断日(または新しい訪問看護指示書の開始日)から医療保険に切り替えます。切り替え前の期間は介護保険での算定が認められます。確定診断後は速やかに指示書・請求の変更を行ってください。
プロフィール
判断結果:医療保険
根拠: 67歳で要支援1の認定あり。パーキンソン病で「ホーエン・ヤール3度以上かつ生活機能障害度II度以上」の条件を満たしているため、別表第7(パーキンソン病関連疾患)に該当します。要支援者であっても別表第7に該当すれば医療保険が優先されます。
注意点: 「要支援1で軽度だから介護保険」という判断を誤りやすいです。別表第7の疾患判定は要介護度ではなく疾患の重症度によります。
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月の途中で保険が変わるケースは複数あります。それぞれの状況に応じた実務フローを解説します。
何が変わるか
誕生日の「前日」ルールに注意
法律上、65歳の誕生日は「誕生日の前日」を基準とします(年齢計算ニ関スル法律)。例えば誕生日が4月10日の場合、4月9日から第1号被保険者資格が発生します。ただし4月9日に認定通知が届かない限り、引き続き医療保険での算定となります。
実務フロー
65歳誕生日が3ヶ月前に近づいた
↓
利用者・家族に要介護認定申請を促す
(申請は65歳誕生日前でも可能)
↓
認定申請が完了(申請番号を記録)
↓
認定通知が届く(申請から約1〜2ヶ月後が目安)
↓
認定通知に記載された「認定有効期間の開始日」を確認
↓
認定有効期間の開始日から介護保険に切り替え
(別表第7該当の場合は医療保険を継続)
↓
切り替え月はレセプトを2通作成
(医療保険:月初〜認定開始日前日分)
(介護保険:認定開始日〜月末分)
↓
ケアマネジャーに連絡し、ケアプランに
訪問看護を組み込んでもらう
請求上の注意点
何が変わるか
65歳以上で医療保険により訪問看護を受けていた方が、要介護認定を取得した場合、認定有効期間の開始日から介護保険に切り替えます(ただし別表第7該当者は引き続き医療保険)。
実務フロー
要介護認定通知が届く
↓
利用者の主病名を別表第7と照合する
↓
┌─────────────────────┐
↓ ↓
別表第7に該当する 別表第7に非該当
↓ ↓
医療保険を継続 認定有効期間開始日から
介護保険に切り替え
↓
ケアマネジャーに連絡
ケアプランの作成を依頼
↓
介護保険のレセプト作成開始
(医療保険のレセプトは閉め)
何が変わるか
介護保険で訪問看護を受けていた利用者が、別表第7に該当する疾患と確定診断された場合、その日から医療保険に切り替えます。
実務フロー
主治医から別表第7疾患の確定診断の通知
↓
主治医に新たな訪問看護指示書の作成を依頼
(医療保険用の訪問看護指示書)
↓
指示書の開始日以降、医療保険で算定開始
↓
ケアマネジャーに保険変更を連絡
(ケアプランから訪問看護を除く旨を伝える)
↓
医療保険レセプトへの切り替え
(切り替え前の期間は介護保険での算定を維持)
介護保険で訪問看護を受けている利用者に、急性増悪・退院直後などを理由に特別訪問看護指示書が交付された場合:
特別訪問看護指示書が交付される
(有効期間:最大14日間)
↓
指示書の有効期間開始日から医療保険で算定
(介護保険から医療保険へ一時切り替え)
↓
有効期間中の訪問はすべて医療保険で請求
(週3日制限は解除、医療保険版の加算で算定)
↓
有効期間終了日の翌日から介護保険に戻る
↓
同月内にレセプトが2通(医療・介護)になる場合は
日ごとの区分を明確に記録しておく
認定失効の場合
認定有効期間が終了した翌日から医療保険(または自費)に切り替えます。認定の更新申請は期限を守るよう利用者・家族に早めに案内することが大切です。
区分変更(重くなった・軽くなった)の場合
区分変更の結果、要支援から要介護になった場合、または逆になった場合でも、保険種別(介護保険)は変わりません。ただし算定する訪問看護の区分(介護予防訪問看護 vs 通常の訪問看護)が変わる可能性があります。
難病に指定されている疾患(指定難病)の受給者証を取得した場合、医療費の自己負担が軽減されます。
難病の受給者証取得は保険の種別を変えるものではありませんが、利用者の自己負担に影響します。受給者証の有効期間・適用範囲を確認した上で、適切に請求処理を行ってください。
月途中で保険が変わった場合、同月内に2種類のレセプトを作成することになります。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 切り替え日の確認 | 認定通知書・指示書の開始日を正確に記録 |
| 日ごとの記録 | 何月何日が医療保険・何月何日が介護保険かを訪問記録に明記 |
| 加算の適用区分 | 医療保険と介護保険では加算の種類・金額が異なる |
| ケアマネへの連絡 | 介護保険に切り替わる場合はケアマネに速やかに連絡 |
| 利用者への説明 | 保険変更による自己負担の変化を事前に説明 |
返戻リスクの高い月途中切り替えについては「訪問看護レセプトの返戻を完全攻略:原因TOP10チェックリストと再請求マニュアル【2026年版】」も参照ください。
同一の訪問看護ステーションが、同一の利用者に対して同日に医療保険と介護保険の両方で訪問看護を行うことは、原則として認められません。
同一の利用者に対する1日の訪問は、医療保険または介護保険のいずれか一方の保険のみで算定します。
別表第7や別表第8に該当する利用者の場合、同一ステーションによる同日の複数回訪問が認められます。この場合はすべて同一保険(医療保険または介護保険)での算定となります。
| 保険種別 | 根拠 | 同日複数回訪問の可否 |
|---|---|---|
| 医療保険(別表第7) | 週4日以上・複数回の特例 | 可(難病等複数回訪問看護加算で算定) |
| 介護保険(別表第8) | 状態が重く複数回が必要 | 可(2時間ルールの例外として) |
異なる訪問看護ステーションが同日に同一利用者を訪問する場合:
なお、いずれのケースも同一保険の中での算定です。医療保険のステーションと介護保険のステーションが同日に同一利用者を訪問することは原則認められません。
同日に訪問看護の複数回依頼が来た
↓
同一ステーション・同一利用者の場合か確認
↓
┌──────────────────────────┐
↓ ↓
別ステーションによる訪問 同一ステーションによる訪問
↓ ↓
原則可(保険種別の統一を確認) 利用者が別表第7・別表第8該当か確認
↓
┌───────────┐
↓ ↓
該当あり 該当なし
↓ ↓
複数回訪問可 原則不可
(加算で算定)
精神科訪問看護と通常の訪問看護は、原則として同一月内に同一ステーションから両方を算定することは認められません。精神科訪問看護指示書が交付されている期間は精神科訪問看護として一本化します。
保険振り分けの判断ミスには、特定のパターンがあります。自ステーションの請求チェックにご活用ください。
誤った判断: パーキンソン病の診断があるため、別表第7に該当すると判断して医療保険で請求しました。
正しい判断: パーキンソン病の別表第7該当には「ホーエン・ヤール3度以上かつ生活機能障害度II度以上」の条件があります。軽症のパーキンソン病は別表第7に該当せず、介護保険での算定が正しいです。
返戻リスク: 重症度条件を満たさないパーキンソン病患者を医療保険で算定→返戻
誤った判断: 特別訪問看護指示書の有効期間(14日間)が終了したが、そのまま医療保険で請求し続けた。
正しい判断: 有効期間終了日の翌日からは介護保険に戻ります。医療保険での算定は有効期間内のみです。
返戻リスク: 特別指示書期間終了後の医療保険請求→全額返戻
誤った判断: 真皮を超える褥瘡の利用者(要介護3)が別表第8に該当するので医療保険で請求しました。
正しい判断: 別表第8は介護保険での訪問回数の特例を認めるものです。別表第8のみで要介護者が医療保険に切り替わることはありません。介護保険での算定が正しいです。
返戻リスク: 別表第8のみを根拠とした医療保険請求→返戻
誤った判断: 65歳になった利用者が要介護認定を申請中のため、介護保険で請求しました。
正しい判断: 認定通知が届くまでは医療保険での算定です。申請中でも認定が下りる前は医療保険を使います。
返戻リスク: 認定取得前の介護保険請求→返戻
誤った判断: 55歳の利用者を「64歳以下は医療保険」と思い込んで医療保険で請求しました。
正しい判断: 40〜64歳でも特定疾病(16疾病)が原因で要介護認定を受けている場合は介護保険が適用されます。
返戻リスク: 特定疾病による40〜64歳の要介護者を医療保険で請求→返戻
誤った判断: 同一利用者に対して、精神科訪問看護(医療保険)と通常の訪問看護(医療保険)を同月内に算定しました。
正しい判断: 精神科訪問看護指示書が交付された月は、精神科訪問看護療養費として算定します。通常の訪問看護療養費との混在算定は原則認められません。
返戻リスク: 精神科・通常訪問看護の同月混在→返戻または査定
誤った判断: 月途中(10日)から別表第7疾患の診断確定で医療保険に切り替えましたが、月初の1〜9日分も含めて医療保険で請求しました。
正しい判断: 切り替え前(1〜9日)は介護保険、切り替え後(10日〜)は医療保険でそれぞれ別のレセプトを作成します。
返戻リスク: 切り替え以前の訪問を誤った保険種別で算定→返戻
誤った判断: 「気管切開型の人工呼吸器ではなくNPPVだから別表第7に該当しない」と判断して介護保険で請求しました。
正しい判断: 別表第7第20号「人工呼吸器を使用している状態」は、侵襲的・非侵襲的を問いません。NPPVも対象です。
返戻リスク: 人工呼吸器使用者を介護保険で請求→返戻
誤った判断: 別表第7非該当の医療保険利用者に対して週4日訪問し、4日分を算定しました。
正しい判断: 別表第7非該当の医療保険は週3日が上限です。週4日以上の算定は査定されます。
返戻リスク: 週4日以上の算定(別表第7非該当)→週超過分が査定・返戻
誤った判断: 後天性免疫不全症候群(AIDS)の70歳の利用者に要介護認定があったため、介護保険で請求しました。
正しい判断: AIDSは別表第7(第18号)に該当します。要介護認定があっても医療保険が優先されます。
返戻リスク: 別表第7疾患の利用者を介護保険で請求→全額返戻
誤った対応: 医療保険に切り替えたにもかかわらず、ケアマネに連絡しなかった。ケアマネが気づかずにケアプランに訪問看護を組み込んだまま介護保険でも請求が上がった。
正しい対応: 保険種別が変わった場合は速やかにケアマネジャーに連絡し、ケアプランを修正してもらいます。医療保険と介護保険の両方で請求が発生すると二重請求と見なされ、いずれかまたは両方が返戻になります。
誤った判断: 訪問看護指示書に「悪性腫瘍」と記載されていましたが、「末期」かどうかを確認せずに別表第7に該当すると判断しました。
正しい判断: 別表第7の「末期の悪性腫瘍」は、主治医が治癒が困難な状態と判断した場合に限られます。治療継続中で末期と判断されていない場合は別表第7非該当の可能性があります。主治医への確認が必要です。
返戻リスク: 末期と判断されていないがん患者を別表第7に該当として医療保険で算定→返戻
誤った対応: 同月内に特別訪問看護指示書が2通出ていました(気管カニューレ装着)が、月2回の特例を知らずに2通目を無効と判断しました。
正しい判断: 「気管カニューレを使用している状態」または「真皮を超える褥瘡」の場合は、特別訪問看護指示書が月2回まで算定できます。2通目の指示書も有効です。
誤った判断: 介護保険の支給限度額を超えた訪問看護分を「医療保険で請求できる」と判断しました。
正しい判断: 訪問看護は介護保険の対象サービスです。支給限度額を超えた分は原則として全額自己負担となります。医療保険への振り替え算定は認められません(別表第7等の例外を除く)。
返戻リスク: 支給限度額超過分の医療保険請求→返戻
誤った判断: 同一利用者に対して、AステーションAが介護保険で午前に訪問、Bステーションが医療保険で午後に訪問し、それぞれ別々に算定しました。
正しい判断: 同日に医療保険と介護保険による訪問看護が混在することは原則認められません。当日の保険種別を統一する必要があります。
返戻リスク: 同日医療・介護混在算定→どちらかまたは両方が返戻
保険種別の誤りは返戻・査定の直接原因となります。新規受け入れ時と月次の2段階でチェックを行うことで、請求ミスを未然に防ぐことができます。各確認項目を一つひとつ実施し、スタッフ間で情報を共有してから算定に進んでください。
新規利用者受け入れ時に以下を確認してください。印刷してチームで活用できます。
□ 利用者の生年月日(年齢)を確認した
□ 要介護・要支援認定通知書を確認した
(認定番号・有効期間・要介護度)
□ 主病名を医療記録・指示書で確認した
□ 別表第7(20疾患等)との照合を行った
□ 別表第8(20状態等)との照合を行った
□ 特別訪問看護指示書の有無と有効期間を確認した
□ 精神科訪問看護指示書の有無を確認した
□ 人工呼吸器使用の有無を確認した
□ パーキンソン病の場合はホーエン・ヤール度・
生活機能障害度を確認した
□ がんの場合は「末期」との主治医の判断があるか確認した
□ ケアマネジャーの氏名・連絡先を取得した
□ 訪問看護指示書の種類・有効期間・指示開始日を確認した
□ 保険種別を確定し、スタッフ全員に周知した
□ 今月の特別指示書の有無・有効期間を確認した
□ 要介護認定の更新月に該当する利用者を確認した
□ 65歳誕生日到来予定者を確認した
(誕生月の3ヶ月前から案内)
□ 別表第7疾患の新規診断があった利用者を確認した
□ 保険切り替えが発生した利用者の日ごとの
保険種別を記録した
□ ケアマネジャーへの連絡が必要な変更を通知した
□ レセプト提出前に保険種別のダブルチェックを実施した
原則として、同一の利用者に対して介護保険と医療保険の訪問看護を同月に請求することは認められません。
もっとも、月途中で保険が切り替わった場合(特別指示書の交付・要介護認定の取得など)は、切り替え前と後でそれぞれの保険での請求が発生します。この場合は同月に2種類のレセプトを作成することになります。
あります。主に以下のケースです。
難病(指定難病)の患者であっても、その疾患が別表第7に該当しない場合は必ずしも医療保険ではありません。別表第7に含まれる難病(多発性硬化症・ALS・多系統萎縮症など)は医療保険が優先されますが、別表第7に含まれない難病は通常通りフローチャートに従って判断します。
通常の疾患・状態の場合、特別訪問看護指示書は月1回の交付が上限です。「気管カニューレを使用している状態」または「真皮を超える褥瘡の状態」の場合のみ月2回まで算定可能です。
40歳未満は介護保険の被保険者ではないため、どのような状態・疾患でも医療保険が適用されます。
原則として認められません。保険の振り分けは法令に基づくルールであり、利用者の希望によって変えることはできません。医療保険が適用される条件を満たしていない場合は、介護保険で算定する必要があります。
はい、様式は異なります。
なお、実務上は同一様式が利用できる場合もあります。詳細は主治医や行政窓口に確認してください。
過去の請求を取り下げて正しい保険での再請求を行うことは可能です。ただし時効(国保連への請求から2年)があります。過去の誤りに気づいたら速やかに対応してください。具体的な手順については「訪問看護レセプトの返戻を完全攻略:原因TOP10チェックリストと再請求マニュアル【2026年版】」を参照してください。
基本的な保険振り分けのルール(介護保険優先、別表第7・別表第8の適用等)は同じです。一方、病院・診療所の訪問看護は算定する報酬体系(診療報酬の「訪問看護・指導料」等)が異なる場合があります。
特定医療費助成(難病受給者証)は、別表第7に該当して医療保険で訪問看護を行っている利用者の自己負担を軽減するものです。介護保険で訪問看護を提供している場合には適用されません。利用者が難病の受給者証を持っている場合は、必ず医療保険で算定しているかを確認してください。
保険者(健康保険の種類)が変わっても、介護保険・医療保険の振り分けルールそのものは変わりません。ただし新しい保険証番号・保険者情報をレセプトに正確に反映させる必要があります。保険証の更新情報を定期的に確認してください。
精神科病院からの退院直後は以下の流れで確認します。
退院直後で状態が不安定な場合は特別訪問看護指示書(月1回・14日間)の交付を主治医に依頼することも検討してください。
訪問看護の保険振り分け判断は複雑に見えますが、段階的なフローチャートに沿って確認すれば、ほとんどのケースは迷わず判断できます。
本記事で解説した内容を整理すると以下のようになります。
Step 1:年齢から始める
39歳以下は医療保険、40〜64歳は特定疾病確認へ、65歳以上は認定確認へ進みます。
Step 2:要介護認定の有無
認定なしは医療保険、認定ありは別表第7確認へ進みます。
Step 3:別表第7に該当するか
該当すれば医療保険、非該当であれば精神科指示書・特別指示書の確認へ進みます。
Step 4:指示書の種類
精神科訪問看護指示書があれば医療保険(精神科訪問看護)、特別指示書があれば有効期間内は医療保険です。
Step 5:上記すべて非該当
介護保険で算定します。
訪問看護ステーションでは、以下の体制を整えることが必要です。
看護レポでは、訪問記録をLINEで入力するだけでSOAP形式の記録が自動作成され、保険請求CSV(国保連形式)も自動生成されます。月途中の保険切り替えが発生しても、日ごとの記録が正確に残るため、レセプト作成時の混乱を防げます。
看護師1名まで無料のフリープランから試せます(クレジットカード登録不要)。チームで使う場合も1名あたり月980円のTeamプランで、業界最安値水準でご利用いただけます。
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参考・出典
介護保険法が制定された背景には「高齢化社会における医療費の膨張を抑制し、介護を社会全体で支える新しい制度を作る」という目的がありました。
訪問看護において「介護保険優先」のルールが設けられているのは、「要介護状態の高齢者のニーズは、医療よりも生活支援・介護が中心」という考え方に基づいています。医療保険はあくまで「医療が必要な状態(疾病・外傷)への対応」を目的としており、在宅での日常的な看護・生活支援は介護保険で賄うという整理です。
ただし、この原則には多くの例外(別表第7等)があり、実務では「どの保険を使うか」の判断が複雑になっています。
日本の「介護保険・医療保険の二層構造」は世界的にもユニークな制度です。
ドイツ:介護保険制度あり(1994年創設。日本の制度のモデル)。ただし訪問看護の保険の分類は日本と異なります。
北欧諸国:在宅ケアは主に税金を財源とした行政サービス。日本の「保険」という仕組みとは根本的に異なります。
アメリカ:メディケア(高齢者向け公的医療保険)でホームヘルスサービスとして在宅看護を提供。訪問看護師が在宅で提供できるサービスの範囲が日本とは異なります。
日本の制度は複雑ですが、「誰もが公的保険で訪問看護を受けられる」という点では、在宅医療先進国としての強みがあります。
訪問看護師が保険制度に詳しいことは、単に「返戻を防ぐため」だけではありません。
利用者の権利保護のため:
適切なケア計画のため:
多職種連携のため:
臨床判断力・コミュニケーション能力と同様に、保険・制度の知識は訪問看護師の専門性を構成する重要な要素です。
「保険は事務の仕事」という考え方は古く、訪問看護師も自分が提供するサービスの保険上の位置づけを理解して働くことが求められています。
介護保険と医療保険では、訪問記録(SOAP等)に求められる内容も微妙に異なります。
医療保険での記録の重点:
介護保険での記録の重点:
どちらの保険でも「SOAPで記録する」という基本は同じですが、審査で問われるポイントが異なることを意識した記録を心がけてください。SOAPの書き方については「訪問看護のSOAP記録の書き方」をご参照ください。
訪問看護では、同一の利用者に対して1日に2回以上の訪問を行う場合、「2時間の間隔を空けること」が要件になっています(医療保険では一部例外あり)。
2時間ルールの詳細については「訪問看護の2時間ルール解説」で解説しています。
保険振り分けとの関係:
介護保険での2時間ルールと医療保険での2時間ルールでは、適用範囲や例外条件が異なります。特に特別指示書期間中(医療保険)は、介護保険の2時間ルールとは別のルールが適用されます。
保険を切り替えた月には、特に「この月のこの日は何時間ルールが適用されるか」を慎重に確認してください。
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