「ターミナルケア加算を取り漏らしている」「どこまで記録すれば算定できるのか分からない」「医療保険と介護保険でどちらが有利なのか」——在宅看取りに関わる訪問看護ステーションから、こうした声が後を絶ちません。
2024年(令和6年)の介護報酬改定では、訪問看護のターミナルケア加算が2,000単位から2,500単位へ引き上げられ、2026年(令和8年)改定でも基本的な枠組みが継続されました。この改定は単なる増額にとどまらず、在宅看取りを推進するための重要な政策シグナルです。医療保険の「ターミナルケア療養費1・2」と合わせて適切に算定できれば、1件の看取りで数万円の加算収入を確保できます。
⚠️ 2026年改定の要点 2026年4月施行の改定では、ターミナルケア加算・ターミナルケア療養費の単位数・算定要件に実質的な変更はありません。ただし訪問時間の記録義務化により、死亡日前14日以内の訪問記録に開始・終了時刻の正確な記載が必要になります。記録不備は算定時の返戻リスクに直結します。
しかし、現場では「算定要件を満たしているはずなのに請求できていない」「記録が不十分で監査で指摘される」「連携体制の構築が後手に回っている」といった問題が散見されます。看取りの場面は感情的・心理的にも重く、実務の正確性が疎かになりやすい領域です。
算定要件の完全解説から看取り連携体制の構築手順、記録テンプレート5パターン、加算額シミュレーション、グリーフケアの実務まで、在宅看取りに関するすべてを網羅しています。現場で即使える情報を体系的に整理しました。
1. ターミナルケア加算とは何か——基本概念と2024年改定の意義
1-1. ターミナルケア加算の定義
訪問看護ステーションが終末期(ターミナル期)にある利用者に対してターミナルケアを実施した場合に算定できる加算が、ターミナルケア加算です。利用者が死亡した月に1回限り算定できます。
ここで言う「ターミナルケア」とは、単なる症状緩和のケアにとどまらず、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな全人的苦痛を緩和し、本人と家族が最期まで尊厳をもって過ごせるよう支援することです。訪問看護師は、医師や介護支援専門員(ケアマネジャー)と連携しながら、在宅での看取りを支える中核的な役割を担います。
根拠となる制度は利用する保険の種類によって異なり、大きく2つに分かれます。
- 介護保険:ターミナルケア加算(2,500単位/死亡月)
- 医療保険:訪問看護ターミナルケア療養費1(25,000円)または療養費2(10,000円)
両制度は算定要件・金額・対象者のいずれも異なるため、利用者の状況に応じて適切に使い分けることが大切です。
1-2. 2024年改定で何が変わったか
2024年(令和6年)6月の介護報酬改定では、訪問看護のターミナルケア加算に関して以下の変更が行われました。
単位数の引き上げ(最重要変更点)
| 改定前 | 改定後(2024年6月〜) |
|---|---|
| 2,000単位 | 2,500単位 |
増加幅は500単位、金額換算で約5,000円(1単位10円換算)の増額です。
この引き上げの背景には、介護保険と医療保険の評価格差の是正があります。医療保険のターミナルケア療養費1(25,000円)と比べ、介護保険の加算額(改定前:約20,000円)は明らかに低い評価でした。2024年改定でほぼ同等の評価となったことで、介護保険利用者に対する在宅看取りへのインセンティブが強化されました。
算定要件は変更なし
重要な点として、算定要件自体に変更はありません。改定対応として求められるのは、主に以下の2点です。
- 請求システムの単位数更新(2,000 → 2,500)
- 改定後の収入シミュレーション見直し
なお、医療保険のターミナルケア療養費(療養費1・2)については、2024年改定では単位数や要件の変更は行われていません。
1-3. 在宅看取りの現状と訪問看護師への期待
厚生労働省の統計によると、日本の死亡場所は長年「病院」が最多を占めてきましたが、近年は在宅死亡の割合が増加傾向にあります。政府の「地域包括ケアシステム」推進の下、在宅での看取り件数は今後さらに増加することが見込まれています。
こうした社会的背景の中で、訪問看護師は在宅看取りにおいて最も中核的な役割を担います。医師が往診で関わる時間は限られており、在宅での看取りを日々支えるのは訪問看護師です。
だからこそ、ターミナルケア加算の適切な算定は「単なる収入確保」ではなく、看取りの質を担保するための体制整備そのものを意味します。加算算定の要件となっている「24時間対応体制」「主治医との連携」「記録の充実」は、いずれも質の高いターミナルケアに不可欠な要素です。
2. 介護保険のターミナルケア加算——算定要件と実務フロー
2-1. 算定対象者
介護保険のターミナルケア加算を算定できる対象者は、以下の条件を満たす方です。
算定対象(必須条件)
- 要介護1〜5の認定を受けている利用者
- 訪問看護事業所が介護保険の指定を受けていること
算定対象外(重要)
- 要支援1・2の利用者(介護予防訪問看護):ターミナルケア加算は算定不可です。要支援者が死亡した場合でも、この加算は取ることができません
- 利用者が途中で死亡した月に要介護認定が切れていた場合なども注意が必要です
2-2. 算定の4大要件
介護保険でターミナルケア加算を算定するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
要件①:24時間対応体制の整備
訪問看護ステーションが、利用者に対して24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問できる体制を整備していることが必要です。
具体的には、緊急時訪問看護加算の届出を行っていることが前提となります。ターミナルケア加算の届出書(「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に係る届出書」)では、24時間対応体制と緊急時の連絡方法について記載が必要です。
実務上のポイント
- 緊急連絡先を利用者・家族全員に周知する
- 夜間・休日の対応スタッフを事前に決めておく
- 対応フローをマニュアル化し、スタッフ全員が共有する
要件②:主治医との連携と利用者・家族への説明・同意
「主治医との連携の下に、ターミナルケアに係る計画・支援体制について利用者とその家族に十分な説明を行い、同意を得てターミナルケアを行っていること」が必要です。
この要件には、以下の実務が含まれます。
主治医との連携で必要なこと
- ターミナルケアの方針確認(疼痛管理・症状緩和・蘇生の有無など)
- 医師指示書(または訪問看護指示書)の最新化
- 病状変化時の連絡・対応方針の共有
利用者・家族への説明と同意で必要なこと
- ターミナルケアの内容(何をするか、何をしないか)
- 24時間対応体制の説明
- 緊急時の対応手順
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の確認
同意は書面で取ることが推奨されます。口頭同意のみでは、監査時に証跡が残らないリスクがあります。
要件③:訪問日数(死亡日から逆算した2日以上)
「死亡日および死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行っていること」
これが最も実務的に重要な要件です。「死亡日を含む15日間のうち、少なくとも2日間訪問していること」と理解してください。
重要な特例:1日算定が認められる疾患
以下の疾患・状態の利用者については、訪問が1日以上であれば算定可能です。
| 特例対象 |
|---|
| 末期の悪性腫瘍 |
| 後天性免疫不全症候群(AIDS) |
| 脊髄損傷 |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) |
| 多発性硬化症 |
| 人工呼吸器を使用している状態 |
| その他、主治医が頻回訪問を必要と認める急性増悪の状態 |
訪問日数カウントの注意点
- 「ターミナルケアを行った」とみなされる訪問のみカウント可能
- 通常の定期訪問であっても、ターミナルケアの内容を記録書に記載していれば対象になります
- 死亡当日に訪問した場合も、その日はカウントに含まれます
要件④:訪問看護記録書への適切な記録
「ターミナルケアの提供について必要な事項が適切に訪問看護記録書に記録されていること」
具体的に記録すべき内容は以下の3点です。
身体症状の変化と対応する看護に関する記録
- バイタルサイン、意識レベル、呼吸状態
- 疼痛の程度(NRSスケール等)と疼痛管理の内容
- 嚥下機能、排泄状況、褥瘡リスク等
療養・死別に関する利用者と家族の精神的状態の変化とケアの経過
- 本人の気持ち・不安・希望の変化
- 家族の精神的状態(不安・受け入れの程度など)
- 家族への心理的サポートの内容
ターミナルケアの各プロセスにおける利用者・家族の意向把握とアセスメント
- ACP(意思決定支援)の経過
- どこで最期を迎えたいか、どのように過ごしたいか
- DNR(蘇生処置拒否)の意思確認内容
2-3. 届出の手続き
介護保険でターミナルケア加算を算定するには、事業所の届出が必要です。
届出書類名:「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に係る届出書」
届出期限:算定を開始する月の前月15日まで
届出先:各都道府県の介護保険担当部局(または市町村によって異なる)
注意:届出を失念していると、算定要件を満たしていても加算を請求できません。開業時または加算算定を開始する際は、必ず届出状況を確認してください。
2-4. 算定月の考え方
ターミナルケア加算は、利用者が死亡した月に算定します。「ターミナルケアを実施した月」ではないことに注意が必要です。
例えば、3月25日に亡くなった利用者のターミナルケアを3月10日から開始していた場合、算定月は3月です(開始月の2月ではありません)。
3. 医療保険のターミナルケア療養費1・2——区分の違いと算定条件
3-1. 医療保険における制度の位置づけ
医療保険では、介護保険の「ターミナルケア加算」に相当するものとして**「訪問看護ターミナルケア療養費」**が設けられています。訪問看護基本療養費や精神科訪問看護基本療養費とは別に、死亡月に1回算定できる特別な療養費です。
医療保険のターミナルケア療養費は**療養費1(25,000円)と療養費2(10,000円)**の2種類があり、利用者の死亡場所と施設側の加算算定状況によって区分されます。
3-2. ターミナルケア療養費1(25,000円)
算定対象
在宅(自宅)で死亡した利用者に対してターミナルケアを行った場合に算定します。
また、以下の施設で死亡した利用者も療養費1の対象となります。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 地域密着型特別養護老人ホーム
- 老人保健施設(老健)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
ただし、上記施設であっても看取り介護加算等を算定していない場合に療養費1が算定されます。
金額:25,000円(定額)
主な算定要件
- 死亡日および死亡日前14日以内の15日間に、訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を2回以上算定していること
- 利用者またはその家族に対して、緊急連絡担当者の氏名・連絡先電話番号・緊急時の注意事項等を説明した上でターミナルケアを行っていること
- 死亡場所・死亡時刻等を訪問看護記録書に記録していること
3-3. ターミナルケア療養費2(10,000円)
算定対象
施設(特養・老健・グループホーム等)で死亡し、かつその施設が看取り介護加算等を算定している場合に算定します。
具体的には以下の加算等を算定している施設が対象です。
- 看取り介護加算(特別養護老人ホーム)
- 看取り加算(介護老人保健施設、介護医療院)
- 看取り介護加算(認知症対応型共同生活介護)
- その他、看取りに関する加算を算定している施設サービス
なぜ療養費2の金額が低いのか
施設側が看取り介護加算を算定している場合、施設自体がターミナルケアの費用を受け取っています。したがって、訪問看護が算定できるターミナルケア療養費は低額の療養費2(10,000円)となります。これは二重評価を避けるための仕組みです。
金額:10,000円(定額)
3-4. 医療保険の算定要件詳細
医療保険のターミナルケア療養費には、介護保険の「24時間連絡体制」のような体制要件は含まれていません。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
共通算定要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 死亡場所 | 在宅または施設(入院・入所中を除く) |
| 訪問回数 | 死亡日を含む15日間に基本療養費を2回以上算定 |
| 説明と記録 | 緊急連絡先・注意事項の説明、死亡場所・時刻の記録 |
| 一事業所原則 | 同一利用者に対して複数の訪問看護STが算定不可 |
「2回以上算定」の解釈
重要な点として、ここでいう「2回以上」は訪問回数ではなく基本療養費の算定回数です。1日に複数回訪問した場合、通常は1日あたり1回の基本療養費算定です(長時間訪問看護加算等を除く)。
在宅以外での死亡でも算定できるケース
利用者が在宅ケア中に急変し、搬送先の病院で死亡した場合でも、最後の訪問から24時間以内に死亡した場合は算定可能です。この規定により、搬送後短時間で死亡した場合も、訪問看護が適切なターミナルケアを行っていれば療養費を取り損ねるリスクが低減されています。
3-5. 医療保険特有の注意事項
介護保険との重複算定は不可
同一利用者に対して、医療保険のターミナルケア療養費と介護保険のターミナルケア加算を同時に算定することはできません。どちらか一方のみ算定できます。
保険切替時のルール
利用者が同一月中に介護保険から医療保険(または医療保険から介護保険)に切り替えた場合、最後に実施した保険制度でターミナルケア療養費・加算を算定します。
例:3月に介護保険で訪問看護を提供していたが、3月25日に医療保険に切り替えて死亡した場合 → 医療保険のターミナルケア療養費で算定
他の訪問看護ステーションとの関係
同一利用者に対して複数の訪問看護ステーションが関与している場合、ターミナルケア療養費・加算を算定できるのは1つの事業所のみです。複数事業所で調整し、どちらが算定するかを事前に決めておく必要があります。
4. 介護保険vs医療保険——どちらで算定すべきか判断フローチャート
4-1. 保険の優先順位の基本
訪問看護の利用保険(介護保険か医療保険か)は、利用者の状況によって決まります。基本的なルールは以下の通りです。
医療保険が優先される場合
- 40歳未満の利用者(原則として医療保険のみ)
- 要介護認定がない65歳以上の利用者
- 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する利用者(要介護でも医療保険)
- 精神科疾患を主疾患とする利用者(精神科訪問看護)
介護保険が優先される場合
- 要介護1〜5の認定を受けている65歳以上の利用者(別表第7該当を除く)
- 要介護1〜5の認定を受けている40〜64歳の利用者(特定疾病による介護認定)
4-2. ターミナルケア算定の判断フローチャート
利用者が死亡
↓
要介護認定あり?
↓
YES → 別表第7(末期がん・難病等)該当?
↓
YES → 医療保険でターミナルケア療養費を算定
↓
NO → 介護保険でターミナルケア加算を算定
↓
NO → 医療保険でターミナルケア療養費を算定
4-3. 別表第7(医療保険適用)に該当する疾患一覧
以下の疾患を主たる傷病名とする利用者は、要介護認定があっても医療保険で訪問看護を受けます。ターミナルケアも医療保険で算定します。
| 疾患カテゴリ | 具体的な疾患 |
|---|---|
| 悪性腫瘍 | 末期の悪性腫瘍 |
| 神経難病 | 多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群(AIDS) |
| 循環器・呼吸器 | 人工呼吸器を使用している状態 |
これらの疾患を有する利用者の看取りでは、医療保険のターミナルケア療養費1(25,000円)が算定の対象となります(施設での看取りで施設が看取り加算を算定している場合は療養費2)。
4-4. 算定可能額の比較表
| 保険種別 | 加算・療養費 | 金額 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 介護保険 | ターミナルケア加算 | 2,500単位(約25,000円) | 要介護1〜5、別表第7非該当 |
| 医療保険 | ターミナルケア療養費1 | 25,000円 | 在宅死亡、施設死亡(看取り加算なし) |
| 医療保険 | ターミナルケア療養費2 | 10,000円 | 施設死亡(看取り加算あり) |
2024年改定後は、介護保険の加算額(2,500単位×10円=25,000円)と医療保険の療養費1(25,000円)がほぼ同額となりました。
5. 算定要件フローチャート——死亡日からの逆算タイムライン
5-1. 死亡日からの逆算カレンダー
ターミナルケア算定において最も重要なのは、**「死亡日から逆算した14日間のなかで、2日以上の訪問看護を行っているか」**の確認です。
以下に、死亡日から逆算したタイムラインを示します。
死亡日(D日)を基準に逆算
D-14日 ← この日から算定対象期間
D-13日
D-12日
D-11日
D-10日
D-9日
D-8日
D-7日 ← 7日前。ここで1回目の訪問があれば算定条件①クリア
D-6日
D-5日
D-4日
D-3日
D-2日 ← 2日前
D-1日 ← 前日
D日(死亡日)← 死亡当日の訪問もカウント可
この15日間(D-14日〜D日)に2日以上の訪問看護を行っていること
5-2. 算定可否の判断フロー
STEP1: 利用者が死亡したことを確認
↓
STEP2: 保険の確認(介護保険 or 医療保険)
↓
STEP3: 死亡日から14日前をカレンダーで確認
↓
STEP4: その期間内に訪問した日数をカウント
↓
2日以上 → STEP5へ
1日のみ → 特例疾患に該当するか確認
↓
該当 → STEP5へ
非該当 → 算定不可(2日以上の訪問なし)
↓
STEP5: 24時間対応体制の届出を確認(介護保険の場合)
↓
STEP6: ターミナルケア計画と同意書の存在確認
↓
STEP7: 訪問看護記録書の記録内容確認
↓
要件すべてクリア → ターミナルケア加算/療養費を算定
5-3. 訪問看護の開始からターミナルケアまでの全体タイムライン
実際の臨床では、利用者がターミナル期に入るまでに一定期間の訪問看護が行われています。ここでは、典型的な在宅看取りの流れと各フェーズでの実務を整理します。
フェーズ1:訪問看護開始〜慢性期(数ヶ月〜数年前)
- 訪問看護指示書の確認・更新管理
- 訪問看護計画書・報告書の定期的作成
- 居宅サービス計画(ケアプラン)との整合性確認
- 主治医・ケアマネとの定期的な情報共有
フェーズ2:病状悪化期(数週間〜数ヶ月前)
この時期に行うべき重要実務
- 主治医との「ターミナルケアに関する方針確認」
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の開始または更新
- 「どこで最期を迎えたいか」
- 「どのような状態になっても在宅を希望するか」
- 「蘇生処置についての意向」
- 家族との「看取りに関する事前相談」
- ターミナルケア計画書の作成と家族への説明・同意取得
- 24時間緊急連絡先の確認・周知強化
- 「緊急時の対応マニュアル」を家族に渡す
フェーズ3:ターミナル期(死亡前14日間以内)
この時期が算定要件の核心
- 死亡前14日間を意識した訪問頻度の確保(最低2日以上)
- 毎回の訪問でターミナルケアに関する詳細記録を残す
- 身体症状の変化(呼吸、意識、疼痛)の丁寧な観察と記録
- 家族の精神的サポートと不安への対応を記録
- 主治医への状態報告と往診依頼のタイミング調整
- 看取りに立ち会えない可能性がある夜間・休日の対応確認
フェーズ4:死亡当日・直後
- 死亡時の状況確認(死亡時刻・場所・立会者)
- 主治医への連絡と死亡診断書の発行依頼
- 訪問看護記録書への死亡時刻・場所・状況の記録
- 家族への精神的サポート(初期グリーフケア)
- ターミナルケア療養費・加算の算定確認
- レセプト請求の準備
フェーズ5:死亡後(遺族ケア)
- 40〜49日後(四十九日前後)を目安とした遺族訪問または電話連絡
- 遺族会・グリーフサポートへの案内
- 担当看護師のケア(看護師自身のグリーフケア)
5-4. 期間外訪問でも「ターミナルケア」とみなせるか
「死亡前14日以内ではない訪問」はターミナルケアとしてカウントされませんが、14日以内の訪問でターミナルケアの記録が残っていれば算定可能です。
例えば、定期訪問(週2回)を継続しており、死亡前14日間に4回の訪問があった場合、その4回全てにターミナルケアの記録が残っていれば、算定要件の「2日以上」を十分に満たします。
ただし、「定期訪問の記録をしているだけでターミナルケアの記録がない」場合は、加算算定の根拠が不十分となる可能性があります。ターミナル期に入ったと判断した時点から、記録の内容をターミナルケアに沿った記載に切り替えることが欠かせません。
6. 看取り連携体制の構築手順——医師・ケアマネ・家族との実務連携
6-1. 看取り連携体制が重要な理由
算定要件として「主治医との連携」「他の医療・介護関係者との連携」が求められていますが、これは監査対策のための形式的な要件ではありません。在宅での看取りは、医師・訪問看護師・ケアマネジャー・家族が一体となって初めて成立するチーム医療です。
連携体制が不十分な場合に起こりやすい問題は次の通りです。
- 夜間の急変時に主治医に連絡が取れず、救急搬送してしまう
- 家族が「もう少し頑張れるのでは」と思い、看取りの意思決定ができない
- 疼痛管理が不十分で本人が苦しむ
- ターミナルケア加算の算定要件を事後的に確認して不備が判明する
こうした事態を防ぐために、早期からの連携体制構築が鍵となります。
6-2. 主治医との連携——具体的な実務手順
ステップ①:ターミナルケアの方針確認(ターミナル期認定の合意)
主治医から「予後が限られている」という見解が示された時点で、訪問看護師は積極的に方針確認を行います。
確認すべき項目
- 予後予測(おおよその余命)
- 最優先すべき症状管理(疼痛・呼吸苦・倦怠感など)
- 麻薬性鎮痛剤の処方方針と頓用の使い方
- 急変時(心停止・呼吸停止)の対応方針(蘇生するか否か)
- 死亡確認に来られる医師の氏名と連絡方法
- 夜間・休日の緊急時連絡方法
確認方法 電話連絡だけでなく、できれば**書面(連絡票や診療情報)**で確認内容を残しておくと、後から証跡として使えます。
ステップ②:医師指示書の確認と更新
ターミナル期に入った時点で、訪問看護指示書の内容が現状に合っているか確認します。疾患の進行により処置内容・薬剤が変わっている場合は、指示書の更新を主治医に依頼します。
特に以下の点を確認します。
- 医療用麻薬(オピオイド)の指示が含まれているか
- 処置内容(吸引・経管栄養・点滴等)が現状に合致しているか
- 訪問頻度の増加指示が必要でないか(週〇回→毎日など)
ステップ③:状態変化時の連絡ルール確立
**「どんな状態になったら連絡するか」**を主治医と事前に合意しておきます。
例えば、以下のような基準を文書化して共有します。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| SpO2が〇〇%以下で呼吸困難が出現 | すぐに電話連絡 |
| 意識レベルがJCS〇〇以上 | すぐに電話連絡、往診要請 |
| 疼痛でNRS8以上かつ頓用3回以上使用 | すぐに電話連絡 |
| 四肢冷感・チアノーゼ出現 | 連絡 → 「最期が近い」の判断 |
| 呼吸停止・心停止確認 | 連絡 → 死亡確認 |
この基準を家族にも共有しておくと、「救急車を呼ぶべきか迷った」という混乱を防げます。
6-3. ケアマネジャーとの連携——介護保険調整の要
介護保険でターミナルケア加算を算定する場合、ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)との連携は外せません。
ケアマネとの連携で行うべき実務
サービス担当者会議の活用
ターミナル期への移行が認識された時点で、サービス担当者会議(または照会による情報共有)を行い、以下を関係者全員で確認します。
- ターミナルケアへの移行判断と方針
- 各サービス提供者の役割分担
- 緊急時の連絡体制と対応フロー
- 家族の状況と意向
ケアプランの見直し要請
ターミナル期の訪問頻度増加(週2回→毎日等)に対応するため、ケアマネにケアプランの修正を依頼します。限度額を超える場合は、医療保険への切替検討も含めて相談します。
ターミナルケア加算算定の事前調整
同一利用者に対して複数の訪問看護ステーションが関与している場合、どちらがターミナルケア加算を算定するかを事前にケアマネ経由で調整します。両方が算定することはできません。
月次報告の強化
ターミナル期に入った利用者については、訪問看護報告書の内容をターミナルケアに沿って充実させます。主治医・ケアマネに対して、状態変化・心理的状況・家族の反応を詳細に報告することで、連携の記録が残り、算定要件を満たす根拠にもなります。
6-4. 家族との連携——意思決定支援と精神的サポート
在宅看取りの成否は、家族の精神的な準備と意思決定に大きく依存します。訪問看護師は、医療的ケアを提供しながら、家族の意思決定を支援し、心理的に寄り添う役割を担います。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の実践
ACPとは、「もしもの時」に備えて、本人・家族・医療者が一緒に医療・ケアの方針を話し合うプロセスです。ターミナルケアにおけるACPの主な確認事項は以下の通りです。
本人への確認(意識がある間に)
- 療養・看取りの場所(自宅・施設・病院)
- 延命治療(人工呼吸器・心臓マッサージ等)への意向
- 疼痛管理の優先度(意識があることより苦痛がないことを優先するか)
- 最期に会いたい人、してほしいこと
- 宗教・文化・信条に基づく希望
家族への確認と支援
- 看取りの意思決定に関する家族間の合意状況
- 主介護者の身体的・精神的な疲労度
- 夜間の急変時に一人でいられるか(不安の確認)
- 「自宅で最期を看取る」という覚悟の確認
「急変したときの連絡先」の明確化 家族が迷わないよう、緊急時の連絡先を紙に書いて見えるところに貼ることを勧めます。
■緊急連絡先カード(例)
【昼間の連絡先】
訪問看護:〇〇ステーション TEL:000-000-0000
主治医:〇〇クリニック TEL:000-000-0000
【夜間・休日の連絡先】
訪問看護(夜間当番):TEL:000-000-0000
往診担当医:TEL:000-000-0000
【救急車を呼ぶ前に必ず上記に連絡してください】
→ 救急搬送を望まない場合は、必ず訪問看護または主治医に連絡
家族への「看取りの予兆」説明
死期が近づいている兆候(チェーンストークス呼吸、下顎呼吸、四肢冷感・チアノーゼ、尿量減少、反応低下など)を事前に家族に説明しておきます。これにより、「急に変化した!どうしよう」というパニックを軽減できます。
説明のポイント
- 専門用語を使わず、分かりやすい言葉で
- 「これらの変化は、体が自然に命を終わらせようとしているサインです」と伝える
- 「最期まで聴覚は残ることが多いので、声をかけてあげてください」と伝える
- 家族ができること(そばにいること、声をかけること、手を握ること)を具体的に伝える
6-5. 多職種連携カンファレンスの運営
在宅看取りを支えるチームには、訪問看護師・主治医・ケアマネジャー以外にも、訪問介護員・訪問薬剤師・歯科医師・理学療法士などが関わることがあります。こうした多職種が集まるカンファレンスを定期的に開催することで、情報の共有と方針の統一が図れます。
カンファレンスの開催タイミング
- ターミナル期への移行が判断された時点
- 状態の急変・悪化があった後
- 死亡の1〜2週間前(可能な場合)
- 月1回の定期カンファレンス
カンファレンスで確認すべき議題
- 現在の身体状況と予後予測
- 疼痛・症状管理の方針
- 本人・家族の意向の最新確認
- 各職種の役割分担
- 緊急時の連絡・対応フロー
- 看取り後の手続き確認(死亡診断書・訪問看護の終了手続き等)
ターミナルケアの記録は感情面の配慮も含め負担が大きい業務です。看護レポならLINEから記録を入力でき、SOAP形式への自動整理で記録時間を大幅に短縮します。 → 看護レポを無料で試してみる
7. ターミナルケアの記録テンプレート——SOAP例文5パターン
7-1. ターミナル期の記録が重要な理由
ターミナルケア加算の算定において、訪問看護記録書の内容は算定可否を左右する重要な証跡です。監査では記録内容が詳しく確認されるため、以下の3つの要素が記録に含まれているかが問われます。
- 身体症状の変化と対応する看護
- 利用者・家族の精神的状態の変化とケアの経過
- ターミナルケアの各プロセスにおける意向把握とアセスメント
また、SOAP形式(S:主観的情報、O:客観的情報、A:アセスメント、P:プラン)で記録することで、ケアの根拠と思考プロセスが明確になり、他スタッフへの引き継ぎも容易になります。
注意:以下の例文はテンプレートです。実際の記録では利用者の個別状況に合わせて修正してください。また、個人情報保護の観点から、氏名・診断名等は匿名化してください。
7-2. SOAP例文パターン1:末期がん・疼痛管理が中心
利用者背景:80代男性、大腸がん末期、在宅療養中。疼痛コントロールが主な課題。
訪問日:〇年〇月〇日(死亡前10日)
S(主観的情報)
「今日は昨日より背中が痛い。眠れなかった」「妻に迷惑をかけていて申し訳ない」と発言あり。頓用オキシコドン(〇〇mg)を昨夜23時と今朝5時に自己使用したとのこと。
O(客観的情報)
- バイタルサイン:血圧 110/72mmHg、脈拍 86回/分、体温 37.2℃、SpO2 96%(room air)、呼吸回数 18回/分
- 意識:清明(JCS 0)
- 疼痛:NRSスコア 6/10(安静時)、8/10(体位変換時)。疼痛部位:腰背部・右下腹部
- 皮膚:骨突出部(仙骨・踵)に発赤なし。浮腫なし
- 食事:朝食は半量摂取。水分は経口にて少量ずつ摂取可能
- 排泄:昨日から排尿量減少(〇〇mL/日)
- 家族(妻):涙ぐみながら「できる限り一緒にいたい」と話していた
A(アセスメント)
疼痛コントロールが不十分であり、頓用使用頻度が増加しています。定期投与量の増量について主治医との協議が必要な段階と判断します。食事量・尿量の減少は疾患進行の可能性があり、今後数日単位で状態変化が生じる可能性が高いです。
妻は精神的に動揺していますが、介護を継続する意思は強いです。精神的サポートの継続が必要です。
P(プラン)
- 疼痛管理:主治医(〇〇クリニック 〇〇医師)へ電話連絡し、定期薬増量を依頼。レスキュー使用基準を本人・家族に再説明する
- 褥瘡予防:体位変換を〇時間ごとに行い、エアマットへの変更を検討。ケアマネへ連絡
- 家族支援:妻の疲労・不安に対して傾聴を継続。「最期の兆候」について事前説明を行う
- 次回訪問:翌日に追加訪問を検討。主治医に状態報告後、訪問頻度を相談
7-3. SOAP例文パターン2:ALS(筋萎縮性側索硬化症)・呼吸管理
利用者背景:70代女性、ALS、在宅人工呼吸器使用中。夫と二人暮らし。
訪問日:〇年〇月〇日(死亡前7日)
S(主観的情報)
本人はコミュニケーションボードと目の動きで意思疎通。「眠れている」「苦しくない」と示す。夫は「最近、目の動きが少なくなった。このまま家でいいのか不安」と話す。
O(客観的情報)
- バイタルサイン:血圧 98/64mmHg、脈拍 72回/分(弱め)、体温 36.8℃、SpO2 97%(人工呼吸器使用中、CPAP mode)
- 意識:清明だが反応が緩慢になっている。コミュニケーションボードへの応答に時間を要する
- 呼吸器:〇〇(機種名)を使用。アラームなし。回路・マスクの汚染なし。痰絡みあり、吸引×2回(白色粘稠痰 少量)
- 栄養:経管栄養(胃瘻)にて管理。本日の注入量〇〇mL
- 皮膚:胃瘻周囲の皮膚に軽度発赤あり → 処置済み
- 四肢:全身性の筋緊張低下。末梢は軽度冷感あり
- 夫:疲労感が顕著。「自分が倒れたらどうしよう」との発言あり
A(アセスメント)
ALS進行に伴い、全身状態の緩やかな悪化を認めます。末梢冷感の出現は循環不全の兆候であり、ターミナル期の進行を示唆します。コミュニケーション能力の低下に伴い、本人の意思確認が困難になりつつあります。夫の身体的・精神的疲労が限界に近い可能性があり、レスパイトケアの検討と継続的サポートが必要です。
P(プラン)
- 呼吸管理:吸引手技の確認と指導(夫へ)。アラームへの対応マニュアルを再確認
- 意思確認の記録:現時点での本人意向(コミュニケーションボード使用)を記録。「今後意思確認が困難になった場合の代理意思決定者」について夫と再確認
- 介護者支援:夫の疲労に関してケアマネに報告。訪問介護の増加・訪問入浴の導入等を検討
- 主治医連絡:状態変化について電話連絡。往診時期の調整依頼
7-4. SOAP例文パターン3:心不全末期・急変対応
利用者背景:85代女性、慢性心不全(NYHA IV度)、要介護4、一人暮らし(近くに娘が住む)。
訪問日:〇年〇月〇日(死亡前4日)
S(主観的情報)
「少し動くだけで息が苦しい」「もうあまり長くないと思っている。家にいたい」と話す。娘は「本人が望むなら家でいさせてあげたい。急に夜に何かあったら怖いけど」と話す。
O(客観的情報)
- バイタルサイン:血圧 92/58mmHg、脈拍 110回/分(不整)、体温 36.1℃、SpO2 91%(room air)
- 意識:清明だが疲労感が強い
- 呼吸:安静時も呼吸困難感あり。起坐呼吸の姿勢をとっている。両肺野に水泡音聴取
- 浮腫:両下腿に著明な浮腫(+3)
- 水分摂取:本日は水分〇〇mL/日のみ
- 尿量:減少傾向(〇〇mL/日)
- 娘:「毎日来られるか分からない。一人にしておくのが不安」との発言
A(アセスメント)
収縮期血圧の低下(90mmHg台)、SpO2低下(91%)、心拍増加(110/分)は心不全の急性増悪または終末期変化を示唆します。在宅での急変リスクが高く、今後数日以内に状態が大きく変化する可能性があります。本人は在宅療養の継続を希望しており、本人の意思を尊重した対応が必要です。娘への支援(夜間の不安軽減)が急務です。
P(プラン)
- 緊急連絡:主治医へ現状を電話報告。利尿剤調整・在宅酸素の導入検討依頼
- 娘への説明:「看取りの可能性が近い」ことを丁寧に説明。「急変時の連絡先」「救急車を呼ばない意向の確認」を再確認。緊急時フローカードを娘に渡す
- 訪問頻度:明日以降は毎日訪問に変更。夜間の緊急対応体制を確認
- 在宅酸素:主治医からの指示があり次第、吸引・酸素投与の指導を実施
- ターミナルケア計画書の確認:本人・娘の同意書を本日取得済みであることを確認
7-5. SOAP例文パターン4:認知症末期・家族の意思決定支援
利用者背景:90代女性、アルツハイマー型認知症(重度)、誤嚥性肺炎を繰り返し、栄養摂取困難。要介護5。息子夫婦が同居して介護。
訪問日:〇年〇月〇日(死亡前8日)
S(主観的情報)
本人は言語コミュニケーション不可。痛み刺激に対して顔をしかめる反応あり。息子は「胃瘻を入れた方がいいのか、先生にも聞いているが決められない」と困惑の様子。
O(客観的情報)
- バイタルサイン:血圧 88/54mmHg、脈拍 104回/分、体温 38.2℃(発熱中)、SpO2 94%(room air)
- 意識:JCS 20(呼名反応あり、しかし不明瞭)
- 呼吸:頻呼吸(22回/分)、喘鳴あり
- 栄養:経口摂取はほぼ不可(水分のみトロミつきで少量)
- 皮膚:仙骨部褥瘡(DESIGN-R: D3)、処置実施
- 体重:先月比-2kg(低栄養の進行)
- 息子夫婦:介護疲労が顕著。「何が正解かわからない」と話す
A(アセスメント)
認知症末期に誤嚥性肺炎が加わり、全身状態は急速に悪化しています。経口摂取の維持は困難であり、胃瘻造設を含む人工的栄養補給については、本人の意思が確認できない中で代理意思決定が必要な状況です。厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき、家族(息子)を含めた意思決定支援プロセスを丁寧に実施することがポイントです。胃瘻造設よりも、苦痛緩和を優先した対症ケアへの移行について、多職種チームで共有する必要があります。
P(プラン)
- 多職種カンファレンスの開催:主治医・ケアマネ・訪問看護師で「今後の方針確認」のカンファレンスを実施(日程調整を本日依頼)
- 家族への情報提供:「認知症末期の自然な経過」「胃瘻のメリット・デメリット」「苦痛緩和中心のケアとは何か」についてパンフレットを用いて説明
- 苦痛緩和:発熱・喘鳴への対症処置(解熱、口腔ケア、体位管理)を継続
- 褥瘡処置:本日の処置内容を記録。翌日再評価
- ACPの記録:本日の家族との面談内容(意向・困惑の内容・情報提供した内容)を記録書に詳細に残す
7-6. SOAP例文パターン5:死亡当日の記録
訪問日:〇年〇月〇日(死亡当日)
S(主観的情報)
本人:意識なし。家族(娘)からの連絡により緊急訪問。「朝6時頃から呼吸がゆっくりになって、7時30分に息が止まった気がする」とのこと。娘は泣いていたが、比較的落ち着いた様子。
「ここまで一緒にいられて良かった」と話す。
O(客観的情報)
- 訪問時刻:〇時〇分
- 呼吸:停止確認
- 心拍:停止確認(聴診器にて)
- 瞳孔:散大・対光反射なし(右〇mm/左〇mm)
- 皮膚:全身に斑状チアノーゼあり。四肢冷感強度
- 死亡場所:自宅(居室)
- 死亡推定時刻:家族の証言より〇時〇分頃
- 主治医連絡:〇時〇分に電話。往診を依頼。〇時〇分に死亡診断書発行
- 家族:娘・娘婿が同席。落ち着いた様子で臨終に立ち会えたことを話す
A(アセスメント)
在宅にて穏やかに永眠されました。直前の訪問(昨日〇時〇分)から状態が急速に変化し、本日未明に呼吸停止に至ったと推測されます。本人の「家で最期を迎えたい」という意向は達成されました。
家族は悲嘆状態にありますが、初期の反応は正常な悲嘆プロセスと判断します。グリーフケアの継続的な提供が必要です。
P(プラン)
- 主治医による死亡確認・死亡診断書発行の確認
- ターミナルケア加算/療養費の算定確認(利用保険の種別を確認し、請求処理を行う)
- 遺族ケア:本日の面談での家族の状態を記録。四十九日前後に遺族訪問または電話連絡を行う旨を伝える
- チームへの共有:担当スタッフ全員に死亡の報告。サービス終了手続きの開始
- 自己ケア:担当チームのデブリーフィング(振り返り)を実施
8. 加算額シミュレーション——保険別・ケース別の収入試算
8-1. ターミナルケア加算(介護保険)の収入試算
介護保険のターミナルケア加算は、2,500単位×地域の単位単価で算定されます。
地域により単位単価が異なりますが、ここでは代表的な単価で試算します。
単位単価の目安
| 地域区分 | 単位単価 |
|---|---|
| 1級地(東京都23区等) | 11.40円 |
| 2級地(さいたま市等) | 11.12円 |
| 3級地(横浜市等) | 11.05円 |
| 4級地(名古屋市等) | 10.84円 |
| 5級地(大阪市等) | 10.70円 |
| 6級地(京都市等) | 10.42円 |
| 7級地(その他政令都市等) | 10.21円 |
| その他の地域 | 10.00円 |
ターミナルケア加算の算定額シミュレーション
| 地域区分 | 加算額 | 利用者負担(1割) | 介護保険請求額 |
|---|---|---|---|
| 1級地 | 2,500 × 11.40円 = 28,500円 | 2,850円 | 25,650円 |
| 3級地 | 2,500 × 11.05円 = 27,625円 | 2,763円 | 24,862円 |
| その他 | 2,500 × 10.00円 = 25,000円 | 2,500円 | 22,500円 |
注意:上記は単純計算の目安です。負担割合(1〜3割)は個人によって異なります。また、ターミナルケア加算は支給限度額管理外のため、限度額超過の心配はありません。
1ヶ月の合計収入試算(介護保険・その他地域)
| 項目 | 算定回数 | 単位 | 金額(10円換算) |
|---|---|---|---|
| 訪問看護費 | 週3回×4週 = 12回 | 819単位×12 | 約98,280円 |
| ターミナルケア加算 | 1回(死亡月) | 2,500単位 | 25,000円 |
| 緊急時訪問看護加算 | 1回 | 315単位 | 3,150円 |
| 合計 | 約126,430円 |
※上記はあくまで試算例です。実際の訪問回数・加算算定状況により異なります。
8-2. ターミナルケア療養費(医療保険)の収入試算
医療保険のターミナルケア療養費は定額です。
ターミナルケア療養費の金額
| 区分 | 金額 | 適用場面 |
|---|---|---|
| ターミナルケア療養費1 | 25,000円 | 在宅死亡、または施設(看取り加算なし) |
| ターミナルケア療養費2 | 10,000円 | 施設死亡(看取り加算あり) |
1ヶ月の合計収入試算(医療保険・療養費1のケース)
| 項目 | 算定回数 | 金額 |
|---|---|---|
| 訪問看護基本療養費(Ⅰ・週3日以下) | 12回 | 5,550円×12 = 66,600円 |
| 難病等複数回訪問加算(Ⅱ) | - | - |
| ターミナルケア療養費1 | 1回 | 25,000円 |
| 24時間対応体制加算 | 1回 | 6,520円 |
| 合計 | 約98,120円 |
※医療保険の場合、療養費は全額が保険者(健保・国保)へ請求します。利用者負担は別途発生します。
8-3. 年間での算定インパクト
1事業所が年間12件の在宅看取り(介護保険・療養費1ケース混在)を行った場合の、ターミナルケア関連の加算収入試算です。
| 看取り件数 | 平均加算額(概算) | 年間加算収入(概算) |
|---|---|---|
| 6件(介護保険) | 25,000円/件 | 150,000円 |
| 6件(医療保険・療養費1) | 25,000円/件 | 150,000円 |
| 合計12件 | 約300,000円 |
月平均で約25,000円の追加収入となります。これは小規模ステーションにとって、決して無視できない金額です。
8-4. 算定できなかった場合の機会損失
「算定要件を満たしていたが、記録不備や手続き漏れで算定できなかった」場合の損失を考えると、
- 1件の取り漏れ:15,000〜25,000円の損失
- 年間3件の取り漏れ:45,000〜75,000円の損失
算定漏れ防止のための体制整備(チェックリスト整備、担当者の教育)には、大きな投資対効果があります。
9. よくある算定ミスと防止策——監査対策チェックリスト
9-1. 算定ミスのパターン
現場でよく見られるターミナルケア算定のミスには、主に以下のパターンがあります。
ミス①:「2日以上訪問した」が記録から証明できない
訪問した実績はあっても、記録書にターミナルケアの内容が記録されていない場合、監査で「ターミナルケアを行ったと判断できない」と指摘されるリスクがあります。
防止策:ターミナル期に入ったと判断した時点から、毎回の記録書に身体症状の変化・家族の精神状態・意向確認の内容を必ず記載します。
ミス②:届出忘れ(介護保険)
緊急時訪問看護加算・ターミナルケア体制の届出を失念しているケース。
防止策:開業時のチェックリストに「ターミナルケア体制の届出」を含めます。毎年の更新時期に届出状況を確認します。
ミス③:死亡前14日間の訪問が1日のみ
「死亡前14日以内に2日以上」という要件を把握していても、実際の訪問が1回だけだったケース。
防止策:ターミナル期に入った時点で訪問頻度を上げます。死亡前14日間の訪問日数を常に確認します。
ミス④:同意書・ターミナルケア計画書が未作成
口頭で同意を取っているが書面が残っていないケース。
防止策:ターミナルケアの同意書フォームを事前に用意し、ターミナル期に入った時点で必ず取得します。
ミス⑤:複数事業所で重複算定
同一利用者に対して複数の訪問看護ステーションが関与していて、両方が加算を算定してしまうケース。
防止策:複数事業所が関与している場合は、事前にケアマネ経由で算定事業所を確定します。
ミス⑥:介護保険と医療保険を混同
同一利用者に対して介護保険のターミナルケア加算と医療保険のターミナルケア療養費を同時算定してしまうケース。
防止策:利用者の保険種別を確認し、算定保険を明確にします。月の途中で保険が切り替わった場合は最後の保険で算定します。
9-2. 算定前の最終チェックリスト
算定を行う前に、以下のチェックリストで確認を行ってください。
【ターミナルケア算定 最終確認チェックリスト】
□ 利用者の死亡を確認済み
□ 利用保険(介護保険 or 医療保険)を確認済み
【介護保険の場合】
□ 要介護1〜5の認定があること(要支援は不可)
□ 緊急時訪問看護加算・ターミナルケア体制の届出済み
□ 死亡日を含む14日間の訪問記録で2日以上を確認
(特例疾患は1日以上でOK)
□ ターミナルケア計画書が作成済み
□ 本人・家族の書面同意取得済み
□ 記録書にターミナルケアの内容(身体・精神・意向)が記録済み
□ 複数事業所が関与している場合は算定事業所を確認済み
□ 同月に医療保険のターミナルケア療養費を算定していないこと
【医療保険の場合】
□ 在宅または特定施設で死亡したことを確認
□ 死亡前14日間に基本療養費を2回以上算定していること
□ 緊急連絡担当者・緊急時注意事項を説明済み
□ 死亡場所・死亡時刻を記録書に記録済み
□ 療養費1か療養費2かの判断(施設側の看取り加算算定状況を確認)
□ 複数事業所との重複算定がないこと
□ 同月に介護保険のターミナルケア加算を算定していないこと
9-3. 監査対策——記録の充実が最大の防御
訪問看護の運営指導(旧監査)では、記録の内容が詳しく確認されます。ターミナルケア加算に関連して指摘されやすい事項は以下の通りです。
指摘されやすい事項
- ターミナルケア計画書が作成されていない、または内容が具体的でない
- 同意書に日付・署名がない
- 記録書にターミナルケアの3要素(身体・精神・意向)が記録されていない
- 死亡時刻・場所の記録がない
- 主治医との連携の記録がない(電話連絡した日時・内容のメモがない)
対策:記録書のフォームに「ターミナルケア関連記録」の項目を設けておき、毎回確認しながら記録する習慣を作ることが有効です。
関連記事:訪問看護のSOAP記録書き方ガイド|コピペOK例文40選と監査対策 では、記録の書き方と監査対策を詳しく解説しています。また、訪問看護の加算一覧【2024年改定対応】も合わせてご参照ください。
10. 遺族ケア・グリーフケアの実務——看取り後の家族支援
10-1. グリーフケアとは
グリーフ(grief)とは「悲嘆」を意味する英語で、大切な人との死別によって経験する様々な反応(悲しみ・怒り・罪悪感・空虚感・身体症状など)の総体を指します。グリーフケアとは、この悲嘆を抱える人に寄り添い、自然な悲嘆プロセスが進むよう支援することです。
訪問看護師によるグリーフケアには、患者の生前から死別後まで継続して家族に関わることができるという独自の強みがあります。在宅療養を支えてきた訪問看護師は、利用者の生前の姿を知っており、「あの時のあの表情が忘れられない」「最期に言った言葉は……」という遺族の語りを深く受け止めることができます。
10-2. 悲嘆の正常なプロセスを理解する
グリーフには段階的なプロセスがあることが知られています。看護師が「正常な悲嘆」と「複雑性悲嘆(グリーフが長期化・複雑化した状態)」を見分けるために、基本的なプロセスを理解しておくことが大切です。
悲嘆の一般的なプロセス(Bowlby・Parkes のモデルを参考)
| 段階 | 時期の目安 | 主な反応 |
|---|---|---|
| ショック・麻痺 | 死別直後〜数日 | 現実感の喪失、感情の麻痺、自動的に動く |
| 切望・探索 | 数日〜数ヶ月 | 故人を探し求める、幻覚・幻聴、強い悲しみ |
| 絶望・混乱 | 数週間〜数年 | 無気力、食欲不振、社会的孤立、罪悪感 |
| 再構成 | 数ヶ月〜数年 | 故人との内的絆を保ちながら新たな生活を構築 |
これらの反応は正常な悲嘆です。訪問看護師が「早く立ち直るべき」という姿勢で関わることは、グリーフケアの逆効果になります。
複雑性悲嘆(要注意サイン)
以下の状態が6ヶ月以上続く場合は、専門的な心理支援の紹介を検討します。
- 故人への強い思慕が持続し、日常生活に著しい支障がある
- 死の事実を受け入れられない状態の持続
- 故人に関連した場所・物を完全に回避する
- 強い罪悪感・怒りが続く
- 自傷・自殺念慮がある
10-3. グリーフケアの実務的アクション
アクション①:死亡当日〜数日後の関わり
看護師が臨終に立ち会った場合、または緊急訪問で死亡を確認した場合の初期グリーフケアが、その後の家族支援の土台となります。
当日の対応
- 遺族の言葉をゆっくり聞く時間を確保する(記録作業は後回しにして良い)
- 「よく頑張りましたね」「最期まで一緒にいてあげられました」とねぎらう
- 「こんなに大切にされたお父さんは幸せでしたね」と故人についての肯定的なコメントをする
- 遺族が泣いているなら、一緒に泣いていい(専門職だからといって無感情でいる必要はない)
- 「何か困ったことがあれば、いつでも連絡してください」と伝える
「しないこと」も重要
- 「分かります」と安易に共感を示さない(当事者でなければ分からない)
- 「お気持ちを切り替えて」「前に進みましょう」という言葉は避ける
- 宗教的な解釈(「神様が呼んだのです」など)を押しつけない
アクション②:四十九日前後の遺族訪問・電話
在宅看取りを行った家族への遺族ケアとして、四十九日(死亡後49日)前後のフォローアップが推奨されます。
遺族訪問の手順
- 事前電話連絡:「少しお時間をいただけますか」と日時を事前に相談します。遺族が落ち着いた時間帯を選びます
- 訪問時の服装:地味で落ち着いた色の清潔な服装。喪服は不要(「不幸を予期していた」という印象を与えないため)
- 持参するもの:手書きのグリーフカード(一言メッセージ)、支援リソースのパンフレット
- 訪問の目的の明確化:「その後のご様子が気になってうかがいました」と伝える
遺族との会話のポイント
| 場面 | 対応例 |
|---|---|
| 感謝の言葉をいただいた場合 | 「こちらこそ、関わらせていただいて光栄でした」と返す |
| 罪悪感を示した場合 | 「十分すぎるほどのケアをされていました。これ以上のことはありません」 |
| 泣き崩れた場合 | 黙って傍らに寄り添う。急かさない |
| 「もっとこうすれば良かった」という後悔 | 「あの時の判断は、みんながベストを尽くした結果です」 |
| 支援の必要性を感じる場合 | グリーフサポートグループや相談窓口を紹介 |
アクション③:グリーフカード・弔電
直接訪問が難しい場合でも、手書きのグリーフカードや弔電を送ることで、「覚えていてくれている」という遺族への安心感につながります。
グリーフカードに書く内容の例:
- 「〇〇様のケアに関わらせていただいた貴重な時間を大切にしています」
- 「ご家族の献身的なケアのおかげで、最期まで在宅で過ごすことができました」
- 「つらいときはいつでもご連絡ください」
アクション④:遺族会・グリーフサポートグループの紹介
ステーション内で遺族会を運営することや、地域のグリーフサポートグループへつなぐことも重要な支援です。
遺族は「同じ経験をした人と話したい」というニーズを持っていることが多く、専門家による個別支援とは異なる「仲間との共感」が回復を支えることがあります。
地域のリソース確認
- 地域包括支援センターのグリーフサポート情報
- 緩和ケア病棟・ホスピスの遺族会
- NPO法人が運営するグリーフカフェ
- 宗教・文化に合わせた支援組織
10-4. 訪問看護師自身のグリーフケア(セルフケア)
在宅看取りに関わる訪問看護師は、利用者の死という喪失体験を繰り返します。このことは、看護師自身の精神的健康にも大きな影響を与えます。
「プロだから感情を持ち込まない」という姿勢は、長期的には看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)につながります。チーム全体で以下のようなセルフケアを実践することをお勧めします。
デブリーフィング(振り返り)の実施
看取りがあった後、担当チームで短時間のデブリーフィングを行います。
- 「今回の看取りで良かった点・改善すべき点」
- 「自分の感情:悲しかった、達成感があった、後悔があったなど」
- 「チームへのねぎらいの言葉」
この振り返りは、業務改善にもなり、看護師の感情的な消化にもなります。
管理者の役割
管理者は、在宅看取りを担当したスタッフに対して、以下のような配慮を行うことが推奨されます。
- 「よくやったね」という明示的なねぎらい
- 一時的な訪問件数の調整(看取り直後の負荷軽減)
- 感情を話せる場(個別面談・ケースカンファレンス)の提供
- 必要に応じて産業医・心理士との面談の案内
11. ターミナルケア記録の効率化——看護レポ活用法
11-1. ターミナルケア記録が「業務の重荷」になっている問題
ターミナルケアの記録は、算定要件を満たすためだけでなく、チーム全体でケアの質を維持するためにも外せません。しかし現実には、「終末期の訪問後、記録に30〜40分かかる」「急変対応で精神的に消耗した後に記録を書くのがつらい」という声が多く聞かれます。
記録の質と効率を両立するためには、訪問中のリアルタイム入力とテンプレートの活用が有効です。
11-2. 看護レポのターミナルケア記録サポート機能
看護レポ(kango-repo.com)は、訪問看護の現場に特化した記録・請求管理システムです。ターミナルケア場面での活用メリットは以下の通りです。
LINEベースのリアルタイム記録
スタッフが訪問先でスマートフォンのLINEから記録を入力できるため、訪問中または帰路中に記録を完結させることができます。事務所に戻ってからPCで入力する時間が不要になります。
ターミナルケアの記録では、「今日の呼吸状態」「痛みのレベル」「家族の様子」「連絡事項」などを音声入力や簡易入力で記録し、後から担当看護師・管理者が確認・修正できます。
SOAP形式の訪問看護記録書Ⅱ準拠の記録
看護レポのSOAPドキュメント機能は、訪問看護記録書形式Ⅱ準拠のフォームで記録できます。ターミナルケアに必要な「バイタルサイン」「主訴・発言」「身体所見」「アセスメント」「プラン」の項目が整理されており、記録の抜け漏れを防ぎます。
記録の共有と引き継ぎの効率化
ターミナルケアでは、夜間・休日の緊急対応を含め、複数の看護師が同一利用者に関わることが増えます。看護レポでは記録がクラウド上で共有されるため、「今日の訪問記録を読んでから明日の訪問に備える」という引き継ぎが容易になります。
請求CSV自動生成によるターミナルケア加算算定
訪問看護管理システムとしての機能として、ターミナルケア加算・療養費の請求CSVを自動生成できます。算定項目を入力するだけで、国保連インターフェース仕様に準拠した請求データが出力されます。
11-3. 算定漏れを防ぐための運用設計
ターミナルケア加算の取り漏れを防ぐために、以下の運用フローを導入することをお勧めします。
ターミナルケア算定管理フロー
STEP1:ターミナル期への移行を担当看護師が判断
↓
STEP2:管理者への報告(同日中)
→ ターミナルケアフラグをシステムに立てる
↓
STEP3:算定要件チェックリストの作成
→ 届出確認、同意書取得、記録状況確認
↓
STEP4:死亡後に算定可否の最終確認
→ 2日以上訪問確認、記録内容確認
↓
STEP5:レセプト請求
→ ターミナルケア加算/療養費を算定
このフローを記録システム上で管理することで、「担当者しか知らない」「引き継ぎで漏れた」というリスクを最小化できます。
11-4. 記録の省力化テクニック
ターミナルケアの記録効率を高める具体的なテクニックを紹介します。
定型文(テンプレート)の整備
ターミナル期に頻繁に使う表現を定型文として登録しておきます。
- 「ターミナル期の身体症状として、〇〇を認める。現在の主な看護課題は〇〇である」
- 「本人は療養場所(在宅)の継続を希望している。家族(〇〇)も本人の意向を尊重している」
- 「疼痛管理について主治医(〇〇クリニック)へ電話連絡を行った。〇〇の指示を受けた」
チェック式の観察項目
ターミナル期の観察項目(バイタル・意識レベル・疼痛・呼吸状態・皮膚・精神状態)をチェック式で記録できるフォームを作成しておくと、記録時間を大幅に短縮できます。
音声入力の活用
スマートフォンの音声入力機能を使い、訪問中の観察内容を口頭で記録する方法も有効です。「血圧106の68、脈拍94、呼吸は規則的、痛みのNRS4……」と声に出しながら入力することで、記録時間が半分以下になるケースがあります。
関連記事:訪問看護の記録時間を半分にする5つの効率化テクニック も合わせてご覧ください。
まとめ:在宅看取りの質と収入を両立する
訪問看護のターミナルケア加算は、単なる「収入源」ではありません。24時間対応体制・主治医との連携・詳細な記録・家族支援という算定要件のすべてが、高質な在宅看取りを実現するための条件そのものです。
加算を確実に取るための実務ポイントを改めて整理します。
算定チェックポイント(5項目)
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| ① 届出 | 緊急時訪問看護加算・ターミナルケア体制の届出が完了しているか |
| ② 訪問日数 | 死亡前14日間に2日以上(特例は1日)の訪問があるか |
| ③ 同意書 | ターミナルケア計画書と本人・家族の書面同意が取得されているか |
| ④ 記録 | 身体・精神・意向の3要素が記録書に記録されているか |
| ⑤ 保険確認 | 介護保険か医療保険かを確認し、正しい区分で算定しているか |
看取り連携のポイント(3項目)
- 主治医:ターミナル期の方針確認・急変時の連絡ルール・指示書の最新化
- ケアマネ:サービス担当者会議・訪問頻度増加の調整・複数事業所との算定調整
- 家族:ACP・看取りの予兆説明・緊急連絡先カードの周知
2024年改定で2,500単位に引き上げられたターミナルケア加算を確実に算定しながら、在宅看取りの質を高め続けることが、訪問看護ステーションの社会的使命です。
看取りに関わる訪問看護師の皆様が、本記事を通じて算定の不安を解消し、利用者と家族に寄り添うケアに集中できる環境を整えることのお役に立てれば幸いです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 要支援の利用者が死亡した場合、ターミナルケア加算は取れますか?
取れません。介護保険のターミナルケア加算は、要介護1〜5の利用者が対象です。要支援1・2(介護予防訪問看護)は対象外となります。医療保険を利用している場合は、ターミナルケア療養費として算定できます。
Q2. 死亡前14日間に1日しか訪問できなかった場合は?
原則として算定できません。ただし、末期悪性腫瘍・ALS・AIDS等の特例疾患に該当する場合は、1日以上の訪問で算定可能です。特例疾患に該当しない場合は、14日間に2日以上の訪問が必要です。急変が多い疾患を持つ利用者については、早めに訪問頻度を増加させる計画を立てることが大切です。
Q3. 病院に搬送されて病院で亡くなった場合は算定できますか?
**最後の訪問から24時間以内に死亡した場合は、医療保険のターミナルケア療養費を算定できます。**在宅での訪問後に搬送され、短時間で死亡した場合は対象となります。ただし、病院に入院してから日数が経過した後に亡くなった場合は、在宅でのターミナルケア療養費の算定はできません。
Q4. 介護保険と医療保険の両方でターミナルケアを提供した場合、どちらで算定しますか?
最後に訪問した際の保険制度で算定します。同一月に介護保険と医療保険の両方を利用した場合でも、算定できるのは1件分のみです。保険の切替時は特に注意が必要で、最後の訪問保険を確認してから請求処理を行ってください。
Q5. 複数の訪問看護ステーションが関与している場合、どちらが算定しますか?
1つのステーションのみが算定できます。どちらが算定するかは事前にケアマネジャーを通じて調整してください。後から重複算定が発覚すると、過誤請求として返還を求められる場合があります。
Q6. ターミナルケア加算は支給限度額の対象ですか?
**対象外(加算額管理外)**です。ターミナルケア加算は支給限度額の計算に含まれないため、限度額いっぱいの利用者でも算定できます。
Q7. 同意書は誰からもらえばいいですか?
原則として本人から同意を得ることが最優先です。本人の意思確認が困難な場合(重度認知症・意識障害等)は、家族(法定代理人または成年後見人)から代理として同意を取得します。その際も「本人の意思を最大限尊重する」という姿勢でアプローチすることが大切です。
Q8. ターミナルケア計画書はどのように作成しますか?
法定様式は特に定められていませんが、以下の内容を含める必要があります。
- 利用者情報(氏名・疾患名)
- ターミナルケアの内容(身体的・精神的ケアの方針)
- 24時間対応体制に関する説明
- 緊急時の対応方針(蘇生の有無など)
- 多職種連携体制
- 説明・同意の日付と署名欄
各都道府県の訪問看護ステーション協議会が提供するサンプル様式を参考にすることをお勧めします。
参考・出典
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(訪問看護)」
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